スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
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SUGINAMI MELODY [作者:あつこ]

■ 3

4年の月日は長く、圭ちゃんとの様々な思い出がこの家には刻まれている
この傷は、圭ちゃんがコップを落とした時に出来た傷
このシミは圭ちゃんがお茶をこぼした時に出来たシミ
家が汚れた、と言い、嫌だったこともあったけれど
今となっては圭ちゃんが居たしるし、のように愛おしい

大学で出会って、4年間付き合って。
卒業する直前に彼は、手紙を残して去っていった
「必ず帰ってくる、待っていて欲しい。愛してる帰ったら結婚してくれ」
筆不精な彼はその3語だけ残して私のもとを離れていった
彼と交わしたその約束だけを心の頼りに、待っている

彼に何があったのかは、誰も知らない。
いいや、聞かないでおこう。
たとえ、彼が帰ってきても理由は聞かないで「おかえり」とだけ言おう。
そうしたら、あとは結婚して、子供と一緒に親子で暮らそう。
それだけで、もう満足だ。平凡だけどそれでいい。
圭ちゃんがいるのなら、幸せだ。

圭ちゃんが居なくなってからもう3年がたつ
次の誕生日で私は25歳になってしまう
時が過ぎるのは早い。
小さい頃は、25歳は大人で、ずっと先のことだと想っていたけれど
あんがい、なってみるとそうでもない。
未だに、セロリは食べられないし、お化けも怖い。
心霊番組を見た後は、トイレやお風呂が怖くてたまらない

この前、友達が結婚した。
白いウエディングドレスを着て、幸せそうに笑っていた
私も、あんな風になれるのだろうか?
彼の横で、純白のウエディングドレスを着て永遠の愛、を誓う日が来るのだろうか。
分からない、自信を持って「来る」と言い切れない
もしかして、彼は私を嫌いになったのだろうか
圭ちゃんは、優しいから私に「別れて」とキッパリ言えず、
時間の流れで私に悟らせようとしているのだろうか
そうかもしれない、圭ちゃんならありえる

どっちにしろ、私は今も彼氏一人作らず圭ちゃんの影を追いかけてる
バカの一つ覚えのように、圭ちゃんの名前だけを呼んでいる

どっかの小説じゃ無いけど、朝、目が覚めたら泣いてることがある
バカみたいでしょ、夢に圭ちゃんの姿が、声が、思い出が
少しでも出てくると私の目は、朝には真っ赤に腫れている
あの小説、売れたけど私嫌いなの。
何か、人灰をあんなとこから捨てる、ってただの自己満足って感じがする
私だったら死んだ後、灰をそんなことされたってちっとも嬉しくない
愛なんて感じない。



↓目次

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