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月に帰る  [作者:猫]

■ 10

時計が静かに秒針を動かし続けている

「月、夕飯食おう。起きて。」
「・・・ぅう」
「食べたくない??」
「・・・頭痛い」

「なんだよ、風邪ひいたんだ。」
そう思って彼女の頬に触れてみる

「あ、れ??」

「・・・」

「え?!翔のほうが熱いんじゃない??」

「あ、あれ」
そう言われた瞬間めまいがした
まただ、また視界がぐらついた

「だ、大丈夫??ちょっと、まずいんじゃないの??私もういいから!!布団使って」

違うんだ、きっと俺の目がまた・・・
そう思うと急に不安になってしまった。

視界が消えそうなくらいにぼやけて行く
「月!!」
どこにいるのか、パニックになって分からなくなってしまった
彼女の姿も見えなくなる
そしたら彼女を守ることも出来ない

「どうしたの!!?翔しっかりして!!」
腕をつかまれて、そう言った彼女の声を聞いて涙が溢れた

怖い。見えなくなるのがすごく、怖い。
それは生きていくうえでどれだけ大きな壁だろう
生まれてくるものも、死んでいくものも、目では見ることが出来ない
全てわからなくなってしまうのか
笑っているのか、泣いているのか、

そこにいるのか、いないのかも。



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