一杯のコーヒー [作者:新藤 アキ]
■第1章−7
そんな音を聞いていると、もう店の前だった。
「じゃあ、シオン先行ってて。傘も、一緒に持って行っちゃっていいから」
「えっ、でもユーリ濡れちゃうよ?」
「大丈夫、すぐ戻ってくるから!」
ボクが引き止めるよりも早くユーリは駆け出していた。
カバンと一つの傘を店に置くと、ユーリのお姉さん―シュウさんが顔を出した。
たたっ、と走ってきたユーリにすぐ傘を差し出し、二人で入る。
ユーリの腕の中には何かがいた。
それは、雨に濡れていた猫だった。
「子猫・・・・・・?」
「うん、さっき見つけたの。すっごく寒そうにして可愛そうだったから・・・・・・」
子猫はユーリの腕の中で寒そうにぶるっ、と身を震わせた。
「そっか。じゃあ、店の中に入ろうか。子猫も、ユーリも風邪ひいちゃうよ」
ユーリが店に入ったのを見てからボクも店に入る。
ユーリはすぐにタオルで子猫をくるみ、なべに牛乳を入れて暖める。
牛乳が温まったところで小さな少し深い皿に牛乳を入れ、子猫の近くに置く。
子猫は、てちてちと歩いていき、ぴちゃぴちゃと飲み始めた。
↓目次
【1】 → 【2】 → 【3】 → 【4】 → 【5】 → 【6】 → 【7】 → 【8】 → 【9】 → 【10】
|