悪魔のような君へ [作者:ユウコ]
■第9話
「僕は君のいう"地獄"へ旅立つよ 」
僕はもう分かっていた。地獄へいく時がやってきたと。どれだけ抗おうが時を止めることなんて出来やしない。
もう目の前にある運命に従うしかないのだ。
デュノは静かに言葉を続けた。
「”あなた”が消えた魂にはまた新しい”だれか”が宿るの。それはいつの日か新たな生命として誕生するわ」
デュノは顔をあげ僕を見つめた。
「そうか・・・・・・」
僕は言葉が出なかった。
自分が自分でなくなる。
今までの思い出や考え方もすべて消える。
これ以上、”僕”でいさせてくれない。
今まで考えたこともなかった。
考えれば考えるほど出口のない真っ暗な深い闇に落ちてしまいそうだ。
もがけばもがくほど落ちてゆく。
同時に涙も止まらない。
そう、それは、恐怖だ。
「私はこれを地獄と呼ぶ。私も生を受けて様々な思い出がある以上、
自分自身でいたい。全くの別人なんかになりたくない。だから、地獄と呼ぶの」
デュノは両手を握り締めパッと離して虚空を描いた。
部屋はみるみるうちに真っ白になる。
どこをみても真っ白。
道もどこも見当たらない。
「さぁ、行くのよ」
デュノは僕の背中に触れる。
「・・・・・・あぁ」
僕の腕にデュノの腕が絡みついた。彼女はそっと僕に寄り添った。
「もし、あなたがあなたでなくなっても私はきっと見つけられる。ずっと見守ってあげる」
僕の頬に彼女の柔らかい唇がそっと触れた。
「さようなら」
僕は歩き始めた。
どこへ行けばいいのか何となく分かっていた。
僕の足は自動歩行するようにプログラムされたロボットみたいに歩き続けた。
デュノ・・・・・・。
結佳・・・・・・。
せめて君のことは忘れたくはなかった。
終わり
↓目次
【プロローグ】 → 【第1話】 → 【第2話】 → 【第3話】 → 【第4話】 → 【第5話】 → 【第6話】 → 【第7話】 → 【第8話】 → 【第9話】
この物語はスピッツのダークな世界観をそのまま表現できた作品だと思います。
そして、同時に自殺するなというメッセージを私なりに込めていたり・・・。(デュノの台詞がまさにそれです)
スピッツの曲に登場する男の子は弱そうだけど、衝動性も持ち合わせている。そんな印象から生まれた"僕"(あえて名前はつけてません)。それに続くように"デュノ"が生まれました。
色々と問題がありそうな作品ですが、少しでも伝わってくれれば嬉しいです(^^*
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