スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

青い車 (作者:53)

青い車 【2】

かぶりを振って考えるのを止めた。最近ずっと心がモヤモヤしていて、
手持ち無沙汰になると、どうしても悪いほうに考えこんでしまう。


彼女の寝息に耳をすました。よく見ると、呼吸に合わせて身体も動いているのが判る。
彼女のことをまじまじ見るのも久し振りだ。

だけど、彼女の寝顔だけは、見ないようにした。


・・・。
・・・。
彼女の寝顔を見ると・・・僕は、何故か、2ヶ月前に実家で見た
親父の死に顔を思い出してしまうのである。


理解できない現象。
似ても似つかない二人の顔が、どうして重なる?
そうして僕は、なにか得体の知れない恐怖におそわれて、目を逸らしてしまう。
彼女の、寝顔から。


そういえば、最近は、彼女の起きてるときの顔もろくに見ない。


もともと仕事は別々なのだが、お互い帰りが不規則で、別々に食べて、別々に帰ってきて。
早く帰ったほうはだいたい先に寝てしまうし、
朝はお互い自分の仕度で、顔を見合わせる余裕も無いし。

会話も無くただ淡々と、お互いの日常を済ましているだけの日々。

まるで僕ら、寝る場所を共有する以外は赤の他人みたいだ。
だけどそんな日々が当たり前になってきていて、お互いイチイチそれに触れることもない。
君はどう思っているんだろう?
つらかったり、嫌だったりするのか?


・・・そんなことも、僕は、知らずにいるのか。

53 著