スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

青い車 (作者:53)

青い車 【1】

目を覚ますと目の前に彼女の寝顔があった。僕はごく自然なふうに寝返りを打ってみせ、彼女に背中を向けた。

部屋の中はすでに明るい。カーテンの隙間から差し込むキツい日差しを反射して、
フローリングがきらめいている。
じっとりと蒸し暑くて、汗で湿った身体が気持ち悪い。
時折、扇風機の風が頬を撫ぜる。

・・・
朝なのに、身体は重くて、疲れきっている。時計を見るが、まだ仕度には早すぎる時刻だ。
それなのにどうしても寝なおす気になれなくて、ベッドを出る。
だけどやることがある訳でもない。水を飲んで、一つ大きく溜め息をついた。

最近ずっと、こんな状態だ。
眠りが浅くて、1時間も2時間も早く自然と目が覚めてしまう。 
・・・この猛暑のせいか?
昔からエアコンの類が苦手で、真夏でも夜は扇風機だけですごしてきたのに。


ダイニングチェアに腰掛けて、時の経つのを待った。
狭い部屋に聞こえるのは彼女の規則正しい寝息と、扇風機の廻る音、
遠いセミの鳴き声、外を往来する車の音だけである。

カーテン越しに感じる、朝の喧騒と、夏の喧騒。



もうすぐ始まる、いつもと同じ慌ただしい一日。追われて、追われて、気がついたら終わっていて。
帰って、眠って、起きたら、また始まってる。


仕事が嫌なわけではない。決してうまくいっていないわけではないんだ。
ただ最近、確実にモチベーションが下がってきている。
日々こなす課題に、どうしても徒労感を禁じ得ない。
やりがいって何だったろう。やりたいことって何だった?

53 著