スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ひなたの窓はどこに (作者:仲野フレン)

ひなたの窓はどこに 【6】

「へぇっ?!」

大男はすっとんきょうな声を出した。

「だめだべ、そんなこといっだら!親御さんが泣くべ」

「泣いてくれる人が生きていたらな」

「おめ・・・」

大男が何か言おうとしたのと、リーダーと別の男が一人部屋に入ってきたのが同時だった。

「おしゃべりはそこまでにしとけ、ボンゴ」

「おお、おかえり、サーさん、ロロ」

――ボンゴ・・・この大きな男の名前か、なんとなく似合ってるな――

女はちらりとそう思った。

「ボンゴ、我輩のことはサー様と呼べといつもおっしゃってるじゃないか」

サーと呼ばれた小柄な男はボンゴにそう言った。

「サー様、こいつです」

「了解なさった。今から我輩サー様がおまいを取調べなさるから覚悟しな」

――自分に尊敬語使うなんて・・・なんかこいつ、気持ち悪い――

女はサーという男にあからさまに嫌悪感を示した。

「な、なんだその不服そうな顔は!我輩に歯向かうやつはぼっこぼこのけちょんけちょんのすったもんだの・・・」

「サー様、もういいですから。取調べ始めましょう。・・・ボンゴ、お前は外に出ろ。入り口を見張っとけ」

ロロと呼ばれた男が止めに入った。ボンゴはなにか言いたそうな顔をして部屋を出た。

――こいつがリーダーじゃないのか――

女は3人の男たちの関係が少しわかった気がした。

「あ、ああそうだな。やい宇宙人、名を名乗れ」

「相手に名乗らせる前に自分から名乗るのが礼儀じゃないのか」

女ははっきり言った。

「なぁぁにぃぃ!!ロロ、やはりこいつズッタズタの・・・」

「まぁまぁ、サー様、落ち着いて下さい。ここは我々が礼儀正しい賢い人間だとわからせましょう」

「そ、それもそうだな。」

サーはロロの言葉に納得し、落ち着いた。そしてロロが話し出した。

「我々は【世界和平学会青年会】トーキョー支部の人間だ。私は副支部長のロロ。そしてこちらにおらせられる方が」

「トーキョー支部支部長であり、【上層学会員】の一人、サー様だ!どうだまいったか宇宙人!」

とサーが割り込んできた。サーの偉ぶった口調に女はますます嫌悪感をつのらせた。

「【世界和平学会】って・・・カルト宗教の一派か」

「違う!カルト宗教ではない!【偉大なるお方】が指揮をおとりになっている革命組織だ!」

「なんだっていいじゃん。どうせ信者をだまして金稼ぎだろ」

「なぁぁぁにぃぃぃ!!!」

「サー様、だから落ち着いて」

「これが落ち着いてられるかぁ!!!我々を侮辱しおって!!!」

「落ち着いてください、ちょっと、落ち着いて!」

サーが怒り狂い、それをロロがなだめている姿が女にはこっけいだった。

「こういうとき人は笑うんだな」

女は2人に向かって言った。

「なに?!」

サーとロロが同時に言う。

「俺笑うってのができないからさ。でもホント馬鹿みたい。なぁ、聞きたいんだろ?俺の事。楽しませてもらったからお礼に知ってる事はなんでも話すぜ」

「どこまでも馬鹿にしおってぇ」

と言うサーをなだめながらロロが言う。

「まぁまぁまぁ、ここはこいつの話しを聞きましょう。まずは、お前、名はなんだ?」

「俺の名前は・・・、ヒナタ。シラカバ=ヒナタ」

仲野フレン 著