スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ひなたの窓はどこに (作者:仲野フレン)

ひなたの窓はどこに 【7】

「シラカバ=ヒナタ・・・」

ロロは分厚いコートの内ポケットからメモ帳を取り出すと、書き始めた。

「シラカバ=ヒナタ、おまい、年はいくつだ」

サーがねとねとした声で尋ねる。

「78歳」

ヒナタはきっぱりと言う。

「おぉまぁえぇ、我輩をおちょくるやつは・・・」

「サー様!落ち着いてください!・・・お前、ふざけるな!」

ロロが強い口調でそう言った。

「信じるわけないよな。俺のこと宇宙人って言ってる時点で、60年前の出来事なんか知らないんだろうな、ってなんとなくわかってた」

「どういう意味だ」

「俺はこの惑星から捨てられたんだ、60年前に。意地で戻ってきたけど」

「え・・・」

ロロとサーは怪訝そうな顔をする。

「どうやって【空の上】へ行くんだ?」

「はぁっ?!」

ヒナタは本気で驚いた。

――この60年の間に一体何が――

「60年前は宇宙に行くどころか宇宙に住んでるやつも・・・」

「ちょっと待て、宇宙とはなんだ?!」

「えっ、ちょ、ちょっと!!」

――会話がまるで成り立たない――

「なんてこった・・・俺はまさに浦島太郎だな」

「・・・ウラシマ?」

「まぁいい。俺の年齢は21歳と言う事にしといてくれ」

「いや、それよりも、【空の上】にいらっしゃる事ができるのは【偉大なるお方】のみだ!どういういうことだ!説明しろ!!」

「説明してもらいたいのはこっちだよ!60年の間に一体何があった?!」

「えぇい、我輩は大変お疲れだ。あとはロロ、お前に任せた。我輩は第5アジトへお帰りになる!」

「えぇ?!ちょ、サー様!」

ロロの言う事を無視して、サーは部屋を出て行った。とそれと同時にボンゴが部屋に入ってきた。

「終わったべが?廊下は寒いべ。おらごごえじぬかとおもたべ」

「お疲れ、ボンゴ・・・実は・・・まだまだ終わらなさそうだ・・・」

ロロが気まずそうに言う。

――こりゃ長くなりそうだな――

ヒナタはそう思った。

仲野フレン 著