スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

魔の君 (作者:ラカイル)

魔の君 【3】

高校1年のある日のこと

「え〜、今日は転校生を紹介しよう」
ひゅ〜と待ってましたと言わんばかりに騒ぐ。
誰かが必ずこういう情報をクラスに持ち込んでくるからだ。
「文月さん」
ドアが開く。
てくてくと教台の隣まで歩く。
そして立ち止まりこちらを向く。
「文月 美花さんだ。」
おお〜〜っと生徒たちがざわめく。
なるほどたしかにとじろじろ見ていると転校生がこちらを見る。
見たことがある、会ったことがある。
そんな気がした。
(デジャヴ?)
そんなことを考えていると転校生の自己紹介が始まる。
「文月 美花です。まだよく分からないことばっかりなのでよろしくお願いします。」
男たちが騒ぐ。
「はいはいしつもーん」
「なんでしょう?」
「彼氏、募集してませんか!?」
てめー、抜け駆けすんななど男たちが騒ぐ。
転校生は困ったように先生を見つめる。
しかし先生は楽しいものを見るような目で様子を見てる。
転校生は困ったようにして
「まだ、そういうのはよく分からないので。ごめんなさい」
こいつ振られてやんのーと男子が茶化す。
チャイムが鳴る
「そういうわけで仲良くしてあげなさい。あ、席はあの無愛想な顔してる奴の隣だから」
と言って俺を指す。
(人を指差しちゃいけませんって親に習わなかったのかよ!)
無愛想って言われて少しムカッとした。
「はい」
と言って俺の隣の席にやってくる。
俺の隣に来たら立ち止まり俺を見て口を開いた。
「久しぶり」
そして席に着く。
(やっぱあったことあるのかなー)
と記憶をあさってみる。
「では、私はこれで」
担任が外に出る。
それを見計らってかみんなが転校生の席周辺に群がる。
(うざい・・・)
そう思った俺を席を立ち外に出る。
「あっ」
誰かに声をかけられた気がするが気にしない。
そのまま1時間目をさぼった。

ラカイル 著