スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

魔の君 (作者:ラカイル)

魔の君 【2】

夜10時になりベッドに入る。

気づいたら町の真ん中に立っていた。
「また会えたね」
彼女が笑っていた。
「今日は君が飛んでみてよ」
箒が差し出される
無理だよ。
言いたいのに声が出ない。
僕の不安を感じ取ったのかちがうのか
「大丈夫」
彼女は引かない。
しょうがなく僕は箒を受け取り跨る。
「飛びたいって思ってみて」
言われたとおりに念じてみる。
すると体が浮く感じになる。
「すごーい、一回目でできるなんて」
照れくさくなってしまって右手で頭を掻く。
すると彼女がなったように僕も傾く。
そして落ちる。
腰を打ってしまったらしくひりひりする。
さすってみる。
「あはははは、おじいさんみたい」
笑われた。
彼女の笑顔につられて僕も笑う。
また急に眠気が襲ってきた。
「早いなぁ」
呟く様に彼女は言う。
「また明日」
僕は頷いて目を閉じる。

これから、僕は夜が楽しみになった。
しかしすぐに終わりは来た。

初めに夢を見た日から6日後のこと。

僕はいつものように町の真ん中にいた。
しかし、いつもと違うところがあった。
「また明日」
昨日そういってくれた彼女がいなかった。
それどころか、人がいない。
町には誰もいなかった。
僕は探した。
彼女に会いたかった。
しかし、僕は彼女の名前をしらない。
住んでいる所も。
僕は、彼女のことを何にも知らなかった。
電話を見つける。
とりあえず手当たり次第に番号を押しまくってみた。
つながらない。
それどころかこの町では僕は声が出なかった。
僕は泣いた。

落ち着いたと思ったら自分の部屋にいた。

これからは退屈な日々だった。
小学校卒業
中学校入学
中学校卒業
そして高校入学

ラカイル 著