スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

コスモス (作者:ゆうり)

コスモス 【4】

海に来てから数十分が経ったところだった。
その間、僕も桜も無口になってただ海をじっと見つめているだけ。
そんな沈黙を遮るかのように波は大きな音を立てている。

波の音をじっくり聞いていた僕は突然桜が喋った事になぜだか驚いてしまった。

「ねぇ、私たちが卒業した後の夏休みにここにまた来ようよ」

「いいね。でも、覚えてられないかも」

「任せておいて!!私、覚えるのは得意だから」

そうして2人で決めた約束。

だけどそれは一生叶えられなくなってしまった。
桜が海ではなく空へ飛んで行ってしまったから。

でもその時は2人とも考えてもみなかったことだっただろう。




今更になって僕はすごく悔しくなってきた気がする。
なぜ神様は僕のとっても大切な人を奪っていったんだろう…。
もう頭が半分混乱している。

混乱の中で急に「桜は海で待ってるのかも」
と思いこみ始めた。

はっきり言って普通に考えればありえないことだ。
だけどそんな風に思う…というより、そうとしか今は思えなかった。

僕は急いで車へ戻った。

あの時は車には乗れなかったけど、今は自分の車さえ持っている。
ボロボロだけど僕にとってはかっこいいスポーツカーだ。
本当は桜を乗せてあげたかった。

車に乗り込み、急いで海へと向かった。

きっと桜はそこで待ってるんだ!!!
と普通じゃないことを考えながら。




移動の最中には何も考えてなかった。
ただ2人で初めて行ったあの海へひたすら進んでいくだけ。



「着いた」
20分程度であの約束の海までやってきた。
海風が冷たい。

そして僕はうろ覚えだけど2人で座った場所に行き、座った。

目をゆっくり閉じてさっきの思い出の続きを思い出す。
しかし、帰りのことなど全く思い出すことができない。

僕は「うーん…」
と小さな声で唸った。

すると誰かの声が僕の隣から聞こえてきた。
「何やってるの?そんなところで」

その時、奇跡が起きたのではないかと思った。

桜の声だったのだ。


「え、桜なのか?」

思わず僕は大きな声で喋る。

「うん。桜です」


まさか返事が来るとは…
じゃあ、桜は今ここにいるってことだ!!!

僕は姿が見えない桜に再会できた。

ゆうり 著