スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

コスモス (作者:ゆうり)

コスモス 【3】

約5分後、桜は急ぎ足で戻ってきた。

「ごめん、遅くなった!!!」

「あ、大丈夫。じゃあ行くか」

2人で歩くのは恥ずかしかった。
だから僕はなるべく人通りの少ない道を選んで歩いた。

海は学校からそれほど遠くなく、10分もあれば着くところにあった。
桜は海の近くまで来ると潮風を感じながらゆっくり歩いていた。

海に来るのは久しぶりだ。
僕は昔水泳を習っていたからよく海で泳いでいた。

「そこに座らない?」

桜は比較的きれいなところを指差してそう言う。

「うん」

僕の小さな返事は波の音にかき消されたかもしれない。
もしかしたらあの時彼女の耳に届いていなかったかも…。
それなのに桜はニッコリと笑ってくれた。

「そんなに緊張しなくてもいいんだよ」

「してないはずなんだけど…」

本当にしてないはずなのに、そう言われると緊張してるかもしれないと思い込んでしまう。
僕は今度はリラックスするように努力した。

きれいな砂の上に2人で座る。


「さっきの続きなんだけど、何でそんなに頭いいの?」

「別に頭はみんなと同じだよ。きっと変わらないはずだよ」

「…そっか。じゃあ、これからなんて呼んだらいい?」

「え、苗字でいいけど」

「じゃあ鈴木くんでいいんだ」


そう、僕の苗字は鈴木なのだ。


「でも僕はどう呼んだらいいんだい?」

「桜でいいよ。あんまりこの名前好きじゃないんだけどね」

「何でだよ。いい名前だと思うけど」


この時僕はなんとなくいい事言ったんじゃないかと思った。
それは当たりで、桜は喜んでくれたようで

「本当!?ありがとう!」

とお礼をしてくれた。

ただ僕は自分の思ったことを言っただけなのに。
でも、それで僕は心が落ち着いた気がした。

ゆうり 著