スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

コスモス (作者:ゆうり)

コスモス 【5】

「本当に高校生のときに一緒に海へ行った桜なのか!?」

はっきり言って頭が混乱している。
だって今は存在しない人と話しているんだから。

「だから桜ですって言ったでしょ」

「そうだけど…なんか信じられないというか…」

「そりゃあ、そうだよね」

急に桜の声が淋しげな声に変った。

「でも僕は姿は見えないけど、また会えて嬉しいよ」

「ありがとう。実は私、この約束した海でずっと待ってたの」

「本当か!?だったら行けばよかった…」

「ううん、仕方ないよ。だって私はもういない人だから」


そんな悲しいこと言われると何にも言えなくなるじゃないか。
僕は少し黙ってしまった。
それで桜は元気を取り戻させようとしてくれたのか、いろいろ話し始めてくれた。

ここで待っていた数年は夏になると海水浴に来る人がたくさんいて、見ているのが楽しいとか
冬は人がいないけど波の豪快さが見ていて飽きないとか
細かく話してくれた。

そういう風にして元気にさせてくれるのが桜らしくてよかった。


「1年中楽しそうじゃん」

「本当に観察ってこんなにも楽しいんだなって思ったよ!!!」

「そっか。僕は今のところそんなに楽しくないんだ」


桜は驚いたようで、同時に申し訳なさそうな顔をした。

「何で楽しくないの?」

「桜が死んだからに決まってるだろ」


その瞬間、僕たちの目から涙があふれ出した。
僕はそう言った自分が桜に悪い気がしたから。
桜はその事実を聞いてしまったから。

違う理由だけど、お互いに会いたかった。
我慢していた涙はここで今出てきてしまう。



泣き続けて15分も経った頃だろうか、僕も桜もようやくおさまった。

桜はゆっくり喋りだした。

「本当にごめんね…いつもお墓参りに来てくれてるのは知ってたんだ」

知っていたのか!?
突然嬉しくなった。

「知ってたのか!ありがとう」

「お礼はこっちが言うべきでしょ」

顔は見えないけど、桜がその時ににっこり笑った気がした。

ゆうり 著