スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

夢の世界へ行けたから (作者:笑顔)

夢の世界へ行けたから 【11】

とは言ったものの…。1ヶ月たっても見つからない。
はぁ…やっぱり…見当たらない。

『秋人君…。』

『はい?』

『本当に…この人たちのCDなんて…あるのかな』

『うふふ。現二さんも、面白いこと言いますね。』

そんな事を言っていた時だった。

『あっ…』

僕の体が宙に浮いて、ものすごいスピードでどこかへと
飛ばされていくのが分かった。


『現二さん!!!』

『秋人君!!!』

僕の声はきっと届かなかっただろう…。意識が…。




気付くと、そこは暗い部屋で、床は黒い宝石のように光っていたが
窓の外には、大きな月があった。

『ここは…』

『気付いたのか?次森現二よ、』

『お前は!!』
『名前を忘れたのか?俺はこうして覚えているのに』

『勇気…どうして。』

『お前とあいつを突き放しただけの事。お前とあいつは、今
14kmも離れた場所にいるのだ。』

『何で―。』

僕が言葉を話そうとしたとき。勇気は僕達がもらったCDを持っていた。

『何で…それを…。』

『ふッ。1ヶ月たって、まだ分からないのか??』

『え…』

『13枚もあるアルバムが、この狭い世界で、1ヶ月探してもないという事は、
もともと嘘だったって事だよ。あの食堂のやつは、俺の手下だからな。』

『それじゃぁ…』

『いや、このアーティストはいるぜ、欲しいならやるよ。』

勇気は、乱暴にCDをなげた。

『何てことをするんだ!!』

『必要がない。』

『そんな事ない!!この歌を歌ってる人たちだって頑張って生きてるんだ!!』

『えぇい!!黙れ!!…それよりも。俺と腕試しをしないか?次森』

『何で…お前なんかと』

僕はそう思ったけど、勇気はずっと笑っていて、余裕な表情だった。
―なんで…こんなに笑っていられるんだ―
僕は思った。

『俺自身が戦うのではない、俺の力で戦うんだ。』

『え…』

『…それでは、ごゆっくり』

その言葉と同時に、勇気の姿は見えなくなった。
そこは、宇宙のような場所だった。

『ねぇ…現二。』

『え…』

振り返ると…。

『僕?』

『会いたかったよ。』

何がどうなってるのか、理解ができない。

笑顔 著