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GREEN WORLD [作者:颯]

■2

蔦に足をとられながらも何とか駅の外へ出る
傾きかけた電灯の近くでサラサラと風に流れる草に寝転び
何処までも続いてそうな青い空を見つめた
すみれ、たんぽぽ、クローバー
キアゲハ、てんとう虫、ハナカマキリ
元々、山に囲まれた田舎出身の俺にとっては
なつかしくて、大好きなものばかりで涙が出そうだった。

ずっとこのままでいたい。
ずっとこのまま・・・
そう願って目を閉じた。

・・・あぁ・・・ついうっかり寝てしまっ・・・
・・・・??
なんだ、この匂い・・・
排気ガス・・・?

目をゆっくりと開けると今まであった緑の世界はもうなかった。
俺はなぜかコンクリートの道のど真ん中で寝ていたのだ。
道行く人はざわつきながら変人を見るような目で俺を見て通り過ぎていく。
俺は急いで飛び起き、顔を赤くしながら走ってその場から逃げた。

「な、なんだよどうなってやがんだよ!!」

それからハッと気づいた俺はケータイを取り出し時間を見る
PM 1:12・・・マズイ!会社!!

『いったい何時だと思ってるんだっ!!重要な会議だったんだぞっ!!?』
「も、申し訳ありません!すぐ行きますんで・・・」

言い終わる前に電話を切られてしまった。
なんてことだ最悪だ・・・
またこんな世界に戻ってしまった・・・
この世界には何もないのに
大好きな草や木や虫も・・・

そうだ。
思い出した。

あの薬だ!

俺は前にインターネットに載っていた「癒やしの薬」を買っていたのだ。
その薬を飲みつつけていると、気は楽しくなるし、残業していても疲れないし
眠くならないし、ストレスで増えてしまった体重もストンと落ちたのだ。
そして、今日はついにあの緑の世界に行くことができた・・・

「薬・・・薬がたりない・・・」

急いで鞄の中を探ると青いカプセルの入ったビンを見つけた。
これだ・・・これで・・・
2錠、いや3錠・・・5錠・・・
口の中へ放り込み水で流し込む。

しばらくして顔を上げる。
すると、通りがかりの人々がバタバタと倒れ始めた。
車も止まり錆び始め、倒れた人々も異臭を放ちながら腐り始める。

「うわぁぁっ!!なんだこれっ!?」

それから錆びた車から腐って白骨化した人々から
まるでそれらが種のようにそこから草や木や美しい花達が咲き乱れていく。
綺麗な湖や虫や鳥達も戻ってきた・・・

「やった・・・戻れた・・・」

嬉しくて笑みが零れる。
青く綺麗な空に顔を向け大きな声で笑いながら走っていく。
ずっとこの世界で暮らすんだ俺は・・・!
ずっとずっと・・・

だいすきなこの・・・

 

 

キキーーーーーーーッ・・・・ドンッッ!!!!

「キャーー!!」

「おいっ!救急車だっ!救急車呼べー!!」

「え?何?事故だって?」

「うわぁ・・・凄い血・・・かわいそう・・」

「即死だって言ってたねぇ・・・」

「車が飛び出したの?」

「いや・・・それがさ・・」

「え?何?」

「はねられた人の方がいきなり笑いながら道路に飛び出してきたらしいんだよね」





↓目次

【1】 → 【2】