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GREEN WORLD [作者:颯]

■1 

「ど・・・どうなってんだ?こりゃ」

午前7時半。
いつもの時間に起き
いつものように黒縁の眼鏡をかけ
いつものように歯を磨き
いつものように会社に行く前の憂欝な心を沈めるため
煙草を吸おうとカーテンを開けた・・・

その瞬間、俺が知っている世界は変わってしまっていた。

「・・・・・まだ寝てんのか?俺は・・」

外は緑で溢れかえっていた。
道や道路は固いコンクリートではなく草や花が伸び、草原のように美しく変わり
ビルや車は錆びつき蔦やコケがビッシリと生えている。

「なんだよコレっ・・・田舎っつうより違う世界に来ちまったみたいだよ
・・・ぅわっ!こんな時間!会社・・・会社行かなきゃ」

とりあえず、あたふたしつつもそのままいつものようにスーツに着替え
いつもよりも雑にネクタイを結び、外へ飛び出した。

「すげぇ・・・どこまで続いてるんだコレ」

ここが東京のど真ん中とは思えないくらい
目を瞠るような幻想的で美しい世界だった。
不思議と人は俺以外一人も歩いてはいなかった。
道の途中には小さな湖のような水溜りのようなものもあり
その湖には錆びついてコケのついた電灯が数本倒れそうになりながらも立っていた。
こんなんでは会社に行く駅もこんな感じになってるんじゃ・・・
それ以前に会社もちゃんとあるのか・・・

「・・・あぁ、やっぱしな」

案の定、駅も湖に三分の一ほど浸かっていて
コケやら蔦やらしまいにゃガジュマルの木のようなマングローブの木
のようなモノが駅の壁を突き破って生えていた。

なんかもう、会社に行くのは無理だなと悟りつつも
好奇心というか怖いもの見たさで中に入ってみることにする。

「うわぁぁ・・・冷てぇ・・・水っ」

長靴でも持ってくれば良かったのかねぇ?
いや、すでに脚は膝上まで浸かっていた。長靴履いても無駄だなこりゃ。
階段を上るととりあえず水から逃れることが出来た。

「こんな状況で電車なんかあるのか?・・・あ」

あった。
だけど、どうやら止まったまま動きはしないみたいだ。
いや・・・動けねぇよなこりゃ。
やはり電車も植物達によって緑色に染め上げられていた。
俺は少しだけ開いた電車の扉に手を入れ、力を込めて抉じ開ける。

パシャン・・・

また水かよ・・
中は、もう想像以上だった
水は足首より少し上くらいまで浸水し、水連のような浮き草がたくさん浮いていて
見たことないような花のついた蔦や細い木が中で絡み合うように生えている。
そして水の中には素早く動く黒い影。

「うわっ!・・・魚までいるし・・」

なんというシュールな光景だ。
だけど、数々のこの奇妙で美しい光景に
俺の疲れきっていた心は確実に癒やされていた



↓目次

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