スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

eternal2 (作者:ナナ)

手を伸ばす 【11】

 ガラガラ…
 戸が音を立ててスライドする。
 アオイは、自分が身体の外にいることは分かっていた。
 身体の外にいるときは、見たり聞いたりすることは出来るらしい。
 部屋に入ってきた人物を見て、アオイの思考は停止した。
「ユウト…」
 声にならないのに、アオイは呟いた。
 それともう一人、知らない女がいる。
「アオイ………」
 ユウトは、私の手を握り締める。
 ぼろぼろと涙をこぼしながら、硬く握り締めていた。
 しかし、二言三言漏らした後、ユウトは立ち上がり部屋を出て行った。

 ユウトが出て行った後の部屋で、一人、アオイは考えていた。
「そっか…」
 あくまで、手を握り締められたのは自分の抜け殻だったのだと。
 その事実に、落胆していた。
 そして、悲しくなった。
「どうやったら、戻れるのかな…」
 アオイは、普通の生活に戻ることを強く望んだ。

ナナ 著