スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

桜並木のルルルララ (作者:野谷蔦けい)

桜並木のルルルララ 【4】

だが、すぐに白いスニーカーの踵を軸にして、真紀はくるりとぼくの方に
向き直ると
不思議そうにぼくの顔を見つめていた。

「どうしたの? はやく行こうよ」

「ああ、うん。わかった」

 ぼくもスニーカーの音を響かせて真紀の隣まで追いつくと、桜見物の人の流
れに二人で合流する。
数え切れないほどの桜が舞い散る空の下で、ぼくと真紀は並んで歩き出す。

「あんたと桜祭りをまわるのって、三回目だったよね?」と、チョコバナナの
屋台に
横目をやりながら通り過ぎ、真紀が言った。

「幼稚園の年長組の時だっけ?」

「そうそう。私のお母さんと、修一のお母さんと一緒に来た時」

「ああ、それと……あれか」

「うん。小五の時、今日みたいに偶然に鉢合わせて、一緒に回ったやつ」

「そして、お調子者の杉田に見つかった」

「すっごくみんなにひやかされたよね。あの時期」

「杉田は酷い奴だ。あいつのせいで半年は学校で肩身の狭い思いだった」

「今考えてみるとさ、杉田くん嫉妬してたんだよ。あんたと私が仲が良いか
ら」

「憶測だけで良くもまあ、そんな傲慢な発言が出来るな」

「私、告られたの。小学校の卒業式のとき、杉田くんに。ほら、杉田くんて私
たちと
学区が違うから、違う中学へ行ったでしょ」

「ああ、そう」

「あんまり興味がなさそうね」

「自分のならともかく、人の武勇伝なんて聞いても面白くなんかない」

「ふーん」

「なんだ」

「修一って、よっしーと同じ高校に行くんだよね?」

「ああ」

野谷蔦けい 著