スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

運命の人 PV物語 (作者:えりんこ)

運命の人 PV物語 【4】

「何だ?この音?」

また助手が気づく。

「CDだって。気にすることはない!」

「いやー…」


急に手術室のドアが開く。

「何を手こずってるんですか!?」

「阿佐見先生…」

「もう!こんなもの!ナイフで切っちゃえばいいのよ!」

手術室に入るやいなや、その女医はナイフを持ち出すと一番目につくサング
ラスをかけた遺体のギターのネックにナイフを近づける。


「マサ!ヤバイよー!どうしよう!…ってマサ!何やってるんだよ!何座っ
てんだよ!」

「…あ、ゴメン。ちょっと考えごとしてた…」

「そんなのいいから!早く助けて!ヘルプヘルプ!」

「待って♪ あの人の過去、読めたから。」


すると、後ろを振り向き女医と視線を合わせる。

「佳枝?憶えてる?」

テレパシーで女医に伝える。

その女医は呆然とマサと呼ばれる遺体を見つめた。




「え?え?え?うそ?嘘よね!邦生さん?」



ナイフを下に落とす。大きな音と叫びが手術室中を駆けめぐる。

その反動で手術台が動き出し、3人の格好が乱れた。


「…阿佐見先生?阿佐見先生?」

呆然としたまま、座り込んだ。



「マサ、お前何をした?」



「あの人の旦那さんね、俺とそっくりだったから…5年前に亡くなったみた
いだけど…」

「そうだったのか…」

「ちょっとかわいそうかもしれないけれど…」

そうして、目を閉じた。


テレパシーで会話している間に阿佐見と呼ばれる女医は5,6人にかかえら
れ、外へ担がれた。



ただ運命の人という曲と四つのがら空きの手術台が残るのみだった。

えりんこ 著