スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

タイム・カプセル (作者:えりんこ)

タイム・カプセル 【28】

むくりと起き上がった。


「くさ…あれ?」


そこにいたはずの草野がいない。


「あれ?帰っちゃったの?」


ラジカセを見ると、もうCDは動いていなかった。

未紀はCDを取り出し、CDの穴に人差し指を突っ込んで、部屋を出た。


「おかーさん!」


「何?」


「草野さん、帰っちゃったかも!」


「え?ホントに!?」


「これ、聴いてて眠くなっちゃって寝て起きたらいなかった!」

奥で仕事をしていた未来はちょっと急ぎ足で未紀の持ってたCDを見た。


「これ聴いてたの!?」

「…うん。」

「私もね、これ聴いてたらあっちに行ったのよ!うん年前にね☆」

「そうなのー!?」

「でもね、起きたらCDが真っ二つに割れててね…悲しかったなぁ〜」

「そっかぁ…」

「あんた、それ大事しなさいよ!貴重品よ!貴重品!」

「はいはい!」

そういいながら、未紀はさっき来た道を引き返し部屋へと戻った。



部屋のドアが閉まる音がして少したったとき。


「正宗さん。もうちょい話したかったですよー!」

未来は心の中でつぶやき、くすっと笑って仕事に戻った。

えりんこ 著