スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ハニーハニー (作者:P)

ハニーハニー 【10】

次の日。
風はやっぱり来た。
「昨日はごめんな。なんか、いきなりさ・・・」
「ううん、あたしだっていきなり相談したんだもん。お互い様だよ!」
「ありがとな・・・。」
昨日と雰囲気が違った。
誰の目にもわかりそうなことだ。
「ねぇ風?」
「あ?」
「お父さん好き?」
「どっちの?」
「あ・・・・・」
―――まずい事言った・・・。
「気ぃ使わなくていい。」
「あ、ごめん・・・・。」
「で、どっち?」
「今のお父さん」
「好きだよ。違うほうのは大っ嫌い」
「そうだよね・・・・・。」
―――なに解りきったこときいてるんだろう・・・。
「ねぇ風?」
「なんだよ」
「えっとさぁ・・・・・」
「なんだって」
「聞いてもいい?」
「別にいいけど」
「産んでくれたお父さん、風のことすきかなぁ?」
「んなんしらねぇよ。」
「あ、まあそうなんだけどね、えっと、風はお父さんに好かれてると思う?」
「俺が?」
「うん。」
なぜか、これが一番聞きたかった。
「きらわれてんだろ。」
「なんで?」
「だって捨てたんだぜ?俺を。好きなわけないじゃん」
「そっか・・・。」
「なんだよ」
「いや、なんかね、わたしと同じかなぁって思って。」
「どこが」
「嫌われてると思い込んでるところ。まあね、先輩はわたしのこと嫌ってるよ、絶
対。わたしも、最初は全国民に嫌われてるような気がしてたんだ。『みんな敵!』み
たいな。でもさ、違ったんだよ。わたしは一人じゃなかった」
「お前はいいな。そんな風に思えて。俺なんか、誰一人として味方してくんねぇも
ん」
「やっぱり、風もすぐに気づくよ。誰かは絶対に、いつもそばにいてくれるもん。わ
かってくれる人がいるって、思えるもん」
「・・・なにむきになってんだよ・・・・・。」
「あ、ごめん」
「まあ、ありがとな。そうかもなぁ・・・・。」
「気づくの早っっ!」
「あ、嘘。」
「はぁ?」
「(笑)」
このときは、まだ気づいていなかったかもしれない。
世界が、わたしの世界が輝き初めていることに。

P 著