スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

クリスピー (作者:ひかる)

クリスピー 【14】

「君、クビね。」

「えっ?

「もう帰っていいよ。一生来ないで。

機械の音が鳴り響く部屋で交わした言葉。

小さな会社だった。それでもこの人は一生懸命頑張って働いていた。

そう。それはナナの父だった。

父「・・・なぜなんだろう・・・。ナナのために一生懸命働いてきたのに。

昔を思い返していた。

借金取りには追われ、怖い思いをさせてきたのに、

それでもナナだけは私から逃げなかった。それどころか毎日料理まで作ってくれて・・・

「あの男に頼ったのが間違いだったんだ」

もう何もかも色なんてこの世にはなかった。

絶望のふちに立たされて街を歩いていた時、「何か困ってませんかあー?」

金持ちだと聞いて、頼る奴はこいつしかなかったんだ。

「俺の働いてた子会社は確かあいつの元に置かれてたな

ふっ。笑うしかなかった。





翔「ああ、ナナちゃんこっちこっちー!

ナナ「・・・

翔「ナーナちゃんっ?

ナナ「え?あっ、ああ、翔君。ごめんね、道に迷っちゃって・・

翔「なんか昨日から暗くない?疲れちゃった?

  もし、昨日きつく言っちゃったことが悪かったんなら謝るよ。。ごめんね。

ナナ「!ううん、助けてくれたのに逆に謝らせちゃってごめんなさい・・。

「ハハハッ*」二人で声を上げて笑った。久しぶりに見たナナの笑顔だった。

翔はホッとした。

翔「じゃあ、お土産買いに行こうか!

ナナ「うん!

話し合った結果、お互いがお互いに今日の記念のプレゼントを買うことになった。

翔「じゃあ30分後ね!

ナナ「は〜い*



二人は別のほうへ行った。

ナナ「何にしようかな〜

   ・・・・・あっ!これにしよう!

ナナが手にとったのは水色のビー玉みたいなのが1つついてるキーホルダーだった。

「今度は同じのにならないよね、ふふっ*


翔「せっかく海にきたんだから・・・あっ、これにしよう!

手にとったのは、5センチくらいの大きな貝がらが一つついたキーホルダー。

「なかなか他では見ないでしょ*

ルンルン気分で鼻歌なんか歌いながら街を歩いていた。

ドン!

翔「あいててて・・

「いてーなあー!

翔「あ、すみません。

「あれ?君って・・・

翔はこんな奴知らなかった。

相手はナナの前の彼氏だった。ナナの周りのことは何でも調べる。

もうナナを奪い返すとか、そんなんじゃない。イラついてんだ。

何で俺のものを一つ失わなきゃならないんだ。

彼「ふーん、そーゆーことかー君がかあー。

  だからここにいたわけなんだ。へー。

翔「??

彼「知ってる?ナナのお父さん、会社クビになったんだよ。

翔「えっ!?

・・・この長いようで短い沈黙の意味を、翔は知った。

彼「あと少し。そしたらナナ、奪うから。

ひかる 著