スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【25】

言葉なんて意味は無い、ただ私は彼が好きだということ。それだけ。
手を取った時、お互いの指を絡めている間に熱が出てきて、あったかくなって。
首をかしげて彼の肩に乗せてみると、翔太がいつもより大きく見えてドキドキしたり、
触れ合った場所だけあたたかくって、熱を感じる。

言葉なんて、いらない。



ケーキを食べ終わった後も何も言葉が出てこなかった
言葉なんて私たちの間には意味は無いのだ
きっと言葉にしてもそれはすうっと耳から空へ抜けていくだけだし、
何より、言葉よりもっと大切なことが私達にはある。


翔太が声を漏らす
「・・・いつ、死ぬの・・・・?」
弱く、脆く崩れ落ちそうな小さなか細い声、
私があと少しでも離れていたらきっと聞こえないくらいに。
「二日、あと、二日後の土曜日の満月の夜に。」

満月、
満ちきって、あとは欠けるのを待つだけの土曜日に。私は翔太と空へ行く。
翔太の方をチラリと見てみる、息が白くなっていて、翔太はぼんやりと手をギュッと握る
「二日・・・・」翔太は小さくそう呟いて私に少しだけ、近づく

「――――怖い?死ぬの。」
翔太に思わず聞いてみる、翔太はえ?と目を丸くして私を見つめる


「大丈夫、心配しないで―――」
と翔太は目線をすっとさりげなくずらして言葉だけを投げやりに私にぶつけた
さりげないフリしているけど、分かってるのよ。私。
でも、でも、それでも嫌なの。
あなたと一緒が良いの。
1人は嫌なの。

翔太となら怖くない、翔太と一緒なら寂しくない。
ねぇ、翔太―――。

私を1人にしないで。

手から零れていく溢れんばかりの想い
私は零れているのに気づかず、ただひたすら彼の元へ、歩み寄るのだ。馬鹿の一つ覚えのように。

あつこ 著