春の歌 [作者:三日月 遥]
■第9章
こんな事するんじゃなかった。
感情的になりすぎた自分がバカだと思った。
ごめんね。なお君。
先ほどの老婆の家を訪ねた。
彼女は快く引き受けてくれた。
そして、落ちていた場所も教えてくれた。
私はそこに手を突っ込んだ。
気持ち悪い…。
虫だらけで土のやなにおいがする。
しばらくかき回したけど見付からない。
どこだ?
お願いだから出てきて!
私の願いは届き、指先に金属があたった。
すかさずそれを掴んだ。
花びらのチャームだった。
「やったぁ…。」
私は震えながら叫んだ。
涙も出た。
次の日、私は彼に会い、一切を話した。
彼は笑って
「あぁー。良かった。だって俺、春菜に嫌われたと思ったもん。」
とため息混じりに言った。
「ちょっと…マジで嬉しいんだけど。」
そして、彼は私に優しくキスをした。
温かい、やわらかな感覚が全身に伝わった。
彼は自転車に乗せてくれた。
もう、長くは続かないってわかってる。
勝手に作った歌を歌いながら、気持ちよく坂道を下りていった。
彼は、来週この町を出る。
↓目次
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