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胸に咲いた黄色い花 [作者:えり] ■9 今は本当に夏なんだろうか、と、涼しすぎる社内に不思議な感覚を感じながら、亜紀は昼食をたべていた。 ふと、清の言っていた「地球温暖化」という言葉を思い出す。 けれど、清がそんなことをいうなんて、やっぱり似合わないなあ、と。
「何?亜紀。笑ったりして」
隣にいる小枝(さえ)が、不思議そうに顔を覗き込んでくる。 「また清(セイ)くんのこと考えてたんじゃないの?」 そういって、からかうように肘をあててくる。 「清くんって、例の亜紀さんの彼氏ですか?かわいいってうわさの・・・」 自分で答えるよりも早く、横にいる小枝が返事をする。 「そうそう。そのすっごいかわいい顔した子。初めて海で見たとき、びっくりしたもん。なんか少年っていうかね。私らより2こ下なだけなんだけど、すごく幼くみえるの。だけど背はそこそこあるから、どこか男らしいっていうか、かっこよさも持ってるんだよねー。」 小枝は自慢げに、話し出す。 「へえー。じゃ、美青年ってとこですか。」 「うん。ま、そんなかんじ。でねー、実は私もいいなって思ってたんだけど。いつのまにか亜紀とできてたんだよね」 小枝は横目で恨めしそうに見てくる。 「もう、小枝。いいから。」 少し困った顔で、制した。 「そうなんですか。てことは、その日に出会ってその日につきあったってこと・・・ですか?」 陽子は珍しいことをきいた、という風に目をぱちぱちさせる。 意外、だったのかもしれない。 「まあ、そうだけど。意外?」 そう聞きかえすと、陽子は正直に、ハイ。と答えた。 「なんか、亜紀さんって年上の人と付き合ってそうだったから、驚きました。ていうか、想像できないです。クールな亜紀さんが年下の彼とつきあってるとことか」 クール。その言葉に、ふっと過去の思い出がよぎる。
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