浩輔のスピッツと不思議な世界
[作者:レモンライム]
【3】
なにか、・・なんでもいい。何かが欲しかった。
今のオレを支えてくれるような、なにかが・・・
このままじゃ勉強ができない。
オレは財布に5000円程度入れて、外へ飛び出した。
なんだか久しぶりに酸素を吸った気分だ。
自転車による風の抵抗が、妙に心地よい。
とにかくペダルを漕いだ。漕いで漕いで漕ぎまくった。
フと気がついたら、もうそこは大阪梅田だった。
この寒い時期にオレは汗を掻いている。周りからの視線が気になった。
でもそんなことはお構いなしに、オレは漕ぎ続けた。
とあるCDショップに目が止まった。
しかしその店はとても小さく、古ぼけていた。
一応商店街の中ではあるが、人の通る気配がない細い分かれ道のところにある店だった。
そうだよな。昔はちゃんとCDを買ってたんだ。
近頃ネットモノばかり購入していたオレには、それが妙に懐かしく感じた。
オレは自転車を降りて、店に入ってみた。
老婆「いらっしゃいませ。」
なんだか静けさを感じた。それもそのはず、BGMが流れていないし、この店の客はオレ一人しかいなかった。
店員も一人だけで、年寄りの老婆だった。
老婆は10畳ほどしかない店の片隅にあるレジの後ろに猫背で立っていた。
ここはせまいだけに全体の様子を見渡せる。
その時フと違和感を感じた。
オレは思わず目を疑った。鳥肌がたった。
『スピッツ・・・spitz・・・SPITZ・・・』
全部・・・全部スピッツというバンドしかなかったのだ!!!
こ、これはどういうことだ・・・!
一瞬気が遠くなった。
こんな店があるもんか!
オレは奇妙に感じ、早くこの店から脱出しようと思った。
そして、店を早歩きで出ようとすると、
さっきの老婆がオレの腕を掴んだ・・・・!
ものすごい握力だ・・・!!
浩輔「ウッ・・・」
老婆「・・・・・・・」
浩輔「な、なんだよ!離せよ!!」
老婆「・・・クク・・」
浩輔「ォオ、レ急いでんだよ!!」
老婆「・・・それは・・嘘だな。」
浩輔「な、なに!?」
老婆「おぬしは今、相当苦しんでおるじゃろう・・・?」
浩輔「あァ!?なんのことだよ!」
老婆「私は知っている。おぬしの顔を見れば分かる・・」
浩輔「ばあさん誰だよ!?」
老婆「この店の店員さァ・・クック・・」
浩輔「っそ、そんなこと知ってるって!何か特別な力でもあるの!?」
老婆「逃げないのなら、教えてやる・・」
浩輔「分かった・・!逃げないよ。そ、その前に教えて欲しいことがある。」
老婆「なんじゃ?」
浩輔「この店は、なんで・・なんでスピッツしかないの???」
老婆「・・・」
浩輔「い、言えよ!!」
すると老婆は急に動き出し店のシャッターを閉め始めた。
浩輔「え・・?もう閉めるの?」
老婆「おぬしとはゆっくりと話がしたい・・・」
オレは老婆に茶の間へと案内された。
そこはこれまた6畳ほどしかない、せまい茶の間だったが周りのものは綺麗に整理整頓されていた。
老婆「そこに掛けなさい。」
浩輔「あ、はい。失礼します。」
老婆「煎茶は好きかね・・?」
浩輔「え、ええ。まあ・・・」
オレはお茶を注いでもらったが老婆は飲まなかった。
オレは湯のみをゆっくりと口に当てた。
その時・・・老婆がニヤっと笑った。
ま、まさか・・・!!!
〜中の部へ続く〜
読んでくれてありがとう!!中の部も宜しく!!
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