スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説

スピッツ歌詞TOPオリジナル小説マフラーマンTOP>第11章


マフラーマン [作者:larkheart"95]

■ 第11章 〜死ぬまで幸せでいたい〜

「少年、俺の本気が知りたいか?」

突如、喜八がこう言った。

「…本気?」

俺は返答した

「あぁ、この程度じゃないぜ?俺様の泥はよ!」

そう言って、拳大の泥が飛んできた。間一髪ブラスターではじいたがもう一発来た。
避けきれない!そう直感したが、誰かが舞い降りて踏み潰した。

「…ったく、一人で女のコの前でカッコいいとこ見せようったってそうはいかねぇぜ!」

桃川海だった。なんだか可笑しいと思って先ほどから実はいたらしい。

「こんな状況が俺の初戦とは思わなかったけどな。暴れさせてもらうよ。君だけが目立つのもどうかと思うのでね。」

いつも、一言多い、そしてキザ。男子と女子で態度が豹変するこの男が俺はあまり好めなかったが今は仲間である。

「とりあえず、こいつ倒すぞ。」

「おやおや、少年たちとはいえ、2人になるとは…少し骨が折れそうですねぇ。」

…最初からゆうひはカウントしてないようだ。まぁ当然なのだが。

「まぁ、お互いが死ぬ前に少し私に語らせていただけませんか?」

「何だと!ふざけた真似…」

俺は桃川の口を押さえ代わりに答えた。

「いいだろう。武器を置け。」

喜八は軽く微笑み足元に泥岩を組み立て、そこに腰掛けた。

「話のわかる奴だ。…少し俺について話そうかと思ってな」

喜八はそのまま続けた

「俺だってお前らの一族だったんだよ。昔はな。土属性と水属性の家系だった。」

やはりそうだったか。俺は直感が当たったなと思い頷いた

「しかしなぁ、エスパーが現れて、俺の親父はお前らのと同じように連れてかれた。
しかも親父は酷使されるのを怖れて、この民族について余計なことを吐いちまったらしい。」

喜八は、目をつぶりながら話し続けた。本当は敵であるはずはないのだと俺は思い始めた

「それに対して、あのジジィはキレた。親父の変わりにこの俺を追放した。俺は行き場を失った。」

本当にいやな思い出だったらしく、喜八は頭を押えていた。

「俺は戦うことだけを条件にやむなくエスパーに下った。…さぁ、休憩は済んだろう。勝負を再開しようか少年共!」

喜八は突然立ち上がった。今までにないオーラがたぎっていた。しかしそれは負の感情にかぶっているようにも見えた。

「同情はいらねぇ!俺を倒してもっと真っ当な世界をお前らが作るんだ!さぁ来い!」

敵ながら立派な人なのだと思った。しかし、もう喜八は撃ってこなかった。
最後に泥岩を奴は投げたが桃川がしっかりキャッチし、事なきを得た。

「神速風!」

鎌鼬が喜八を切り刻み、奴はその場に倒れた。

「頼んだぞ、少年。」

既に泥を撃つための筒はからだった。弾切れで観念したのだろう。
なぜだか俺の目に熱いものがこみ上げてきた。人を攻撃することの辛さを知った。
こんなにも不遇な人がいることも知った。
俺はどれだけの人が守れるのだろうか。ゆうひに問いかけたが、彼女も泣いていて「怖かったよ…」としか言えない。
そんな二人のそばで桃川はひとり煙草を吸っていた。二人を見ないように。今のことを忘れたいと願ってるように。
やがて、桃川は無言で去り、再び沈黙が二人を包んだ…先ほどとはまったく違う状態で。こんなデートになるはずじゃなかったのに。
でも、二人の距離は0になっていた。死ぬまで、いや死んでも結ばれていたい。そう俺は願った。

↓目次

【プロローグ】 → 【第1章】 → 【第2章】 → 【第3章】 → 【第4章】 → 【第5章】 → 【第6章】 → 【第7章】 → 【第8章】 → 【第9章】
→ 【第10章】  → 【第11章】 → 【第12章】 → 【第13章】  → 【第14章】 → 【第15章】 → 【第16章】 → 【第17章】 → 【第18章】
 → 【第19章】 → 【第20章】 → 【第21章】 → 【第22章】