スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

魔法のことば2 (作者:つぐみ)

魔法のことば2 【3】

「うん、もちろん。ライブもたまには見にきてよ。いい席取るからさ。」
「そうだね、仕事が忙しくなければ行くよ。」
ふと、考えた。学生時代はなにがあってもきてくれたのにな。忙しくない日常
が卒業という節目に仕事が中心となり、いつでも会えた彼女とは会えなくなる
のかもしれない。
ふぅーと長い息を吐くとそんな俺の気持ちが伝わったのか
「まぁ、なにを投げ出しても初ライブは行くけどね」
にこっと、歯を見せて笑う彼女の笑顔は太陽のようだった。

「じゃぁ私そろそろ行くね。今日は実家帰る前にサークルの卒業パーティーだ
からさ」
ちょっと残念そうな表情を浮かばせながら、一言つぶやいた彼女。
「俺は、そそくさそ帰るか。明日からは練習と作詞作曲始めなきゃだし。」
「そうだね・・って軽音サークルの飲み会は?ちゃんと出なきゃだよ?サーク
ル唯一のアーティスト誕生なんだからさ」
「・・・知ってたんだ。了解。ちゃんと出るようにします。」
「よろしい。ちゃんと報告書だすように。」
・・・ちょっと沈黙のあと二人で顔を見合わせて笑った。
こんな会話もできなくなるんだと思うとすごく悲しかった。
「やば、もう時間だ!じゃぁまたね。」
「うん、またね。」
彼女と学食の入り口で別れた。小さくなってく背中を見て、少し寂しくなっ
た。
「俺もそろそろいくか。」
携帯もポケベルもまだ普及してない時代。家電と公衆電話、手紙。通信手段が
これしかない時代。彼女とは同じ大学ということだけが繋がりだった。
俺たちはこれからどうなっていくんだろう。

3ヵ月後・・・

ライブ活動も順調で、忙しい日々を送っていた。メンバーのためにもいい曲書
かなきゃだし・・。
彼女は初ライブ以来会えてない。お互い仕事が忙しいんだ。
でも、気づいたことがある。俺は彼女のことが好きなんだ。
やっと気づいたこの気持ち。いや、学生のころは気づかないふりをしていたの
かもしれない。君との関係が壊れるかもしれないと思うとなかなか言葉にでき
ないよ。

つぐみ 著