スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

青い車 (作者:53)

青い車 【7】

ひさしぶりに車を使うことにした。彼女の車だが、かなり前から共用している。
後部座席と助手席に仕事関係の物品が散乱していたので、まず二人で掃除した。

ふと車のボンネットを見たら、その曲面に大きな大きな入道雲が映りこんでいた。
・・・僕はなんだか、この車なら、どこまでも行けるんじゃないかと思った。


シートがすっきりしたところで、僕がハンドルを握り、いよいよ出発する。

「何食べる?」
「何食べよう」

「なんでもいいけどネ」
「うーん・・・せっかくだし、遠出したい」

「この格好じゃ良い店は入りづらいなぁ」
「海いこう」

「・・・食べ物じゃないじゃん」

彼女は楽しそうに笑った。僕も笑った。ちょっとだけ余所見運転をした。


結局、昼食はハンバーガーを買った。
ドライブスルーを使ったのも妙に久し振りな気がして、僕は不思議に感動していた。
それを、僕がハンバーガーの味に感動してるものと勘違いして、彼女が笑った。


僕は思う。
・・・僕らはきっと、小さくまとまった繰り返しの日々に慣れて、
そこから外に出なくなって、だけどいつまでもそれが続くように思い込んで、うんざりして、
飽き飽きしていただけなのだ。

53 著