スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

リコリス (作者:ユリコ)

リコリス 第3章 『マリナナ族のオルガ・リコリスと沈黙の闇の意味』

誠也とサアヤは村へ続く1本道を歩き、
村の入り口までたどり着いた。


平凡な村だった。小さな家々が転々と建てられており、
家畜などが盛んであろうと誠也は思った。
しかし、何か力を感じる村だった。


そこにはたくさんの村人がいた。変わった服装だと誠也は思った。
二人のお出ましを待っていたようだった。


「ただいま帰りました」


サアヤが言った。


「おかえりなさいませ。サアヤ様」


そこにいた村人全員がそう言った。
そのうちある一人の村人が一言。


「このお方ですか?」


と。
サアヤは静かに頷いて、


「父上は?」


「族長は今、『リコリス』があった場所へ。ご案内します」


「ありがとう。誠也、一緒に」


いきなり名前を呼ばれて誠也は驚いた。
そしてサアヤの後について行った。













何もない場所にしてはかなり広すぎる場所へ
案内された誠也とサアヤ。

そこに一人の男が立っていた。


「族長、サアヤ様のおかえりです」

どうやらこの村の長らしい。
サアヤが男を呼んだ。


「父上…」


どうやら父親らしい。
男は静かに振り返り、二人を見つめた。
どことなく優しげな雰囲気を持ちつつ、何か強いあるものを備えている感じの人だった。


「……彼と出会ったときに魔物が出たようだな…」


「えぇ!?」


男の発言に誠也は驚いた。何故、この人が知ってるだ!?と。
隣にいたサアヤは少しだけ笑った。


「はい。以前より増して出没しています。力も…確実に…」


「そうか…。そして、君か…異世界から来た人間とは」


「え…あ、はぃ」


「名は?」


「誠也です。久賀誠也です…」


「セイヤ…良い名であるな。
 私はサアヤの父親であり、このマリナナ族の族長であるオルガ・ミラルダ。
 君は今、自分がなぜこの世界へ連れておられたのか、理解できてない状態であろう。
 私の口からすべてを話そう…。聞いてくれるか?」


「そのぉ…未だに信じていいのかわからないです。
 一応落ち着くことはできたとしても。
 でもここが僕がいた世界とは違うのは確かだとは思ってます…。
 彼女の力をこの目で見ましたから…」


「そうか…。なら、まずこの世界のことから話そう…」




オルガは静かに話を始めた。













―――神木『リコリス』が守護する世界『エトランゼ』

すべてはこの神木『リコリス』から成っている世界。
大地に力を、野に花を、人々の心に愛を…
それは『リコリス』の願い。

そしてこの世界の共通はひとつ。

人一人ずつにかならずそれぞれの力が宿っていること。

魔力であり、武力であり。多種多彩…。

人々のその力は大切なものを守るためだけに与えられたもの。
決して他者を苦しめるものには使ってはいけない。

そして、その力だけじゃなしに
人の中にある『心』。それをどれだけ信じることができるかで
己の力の源になるという。

この世界では『心』=己自身の最大の武器なのである。

ユリコ 著