スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

リコリス (作者:ユリコ)

リコリス 第4章 『マリナナ族の村にて』

そして、その神木『リコリス』

世界の柱であり、人と同じ『心』を持つ樹木。
そして、すべての人々が持つ力の集合体でもある。

美しい薄紅の花を咲かしている。

『リコリス』の力は強大であるために
並大抵の者では樹木自体に触れることはできない。

触れることは出来るのは…リコリスに選ばれし者のみ…。
そして…選ばれた者は…―――




オルガはそこで止まって黙ってしまった。


「え…どういうこと…?」


「いや、今は言わないほうが良かろう。いずれ解るときがくる」


「………」



そして、マリナナ族とは…、
この世界の中でも一番魔力・武力共に最大の力を持つ種族である。

なのでそのせいもあり『リコリス』をお守りするという務めを貰い受け、
今に至っている。



「難しいようだが…ご理解できたかな?」


「若干…」


「良かろう…。では、話はここからじゃ…」




そして、今誠也たちがいるこの場所。
この場所はかつて『リコリス』があった場所。


ある時、突然花びらがすべて散り去り…
樹木諸共、消滅したのだ。

原因はハッキリしてはいない。

今も追及中だ。


しかし、ひとつだけ解ること…。


「何だよ…それ」


誠也は少し戸惑った。


「『沈黙の女神』が目覚めようとしているのだ」


「『沈黙の女神』?」



世界の平和の光よりも沈黙の闇を好む女神。
今まで『リコリス』の力によって
封じ込まれており、存在はないものとされていた。
しかし、『リコリス』が消滅したのと同時に
封印が解かれ、大爆発を起こしたのだ。

その爆発によって散りばめられた光が赤い流れ星となって
約7日間空を徘徊した。
我々はそれを『赤星の7日間』と呼ぶようにしている。

それがやがて世界を混乱させる魔物の魂であるとは知らずに。


『沈黙の女神』が今何処にいるかは不明…。
一刻も早く見つけ出し、消滅させねば…。

そして、『リコリス』の復活も…。



「それが…僕がこの世界へ来たことと何の関係が?」


「…『リコリス』を復活させるにはこの世界の者ではなく異世界からの使者が必要となるのだ』


「異世界からの使者?…それが僕ですか?」



異世界の使者は誰でもいいというわけではない。
この世界に通用するぐらいの『心』を持っている者。
『リコリス』を復活させるには異世界の者じゃないとできないことがあるのだ。
それはいずれわかるだろう…。

『リコリス』は消滅と同時に誠也を呼んだのだろう。

誠也の『心』に何かを感じたのだろう。


「んじゃぁ…僕が『リコリス』を…」


「そうじゃ…怖いかもしれぬが…致し方ないのだ」


「……もし僕が断ったら?」







「あなたの世界もこの世界と同じように沈黙の闇に落ちるわ…」


今まで何も言わなかったサアヤが喋りだした。


「あなたは多分、『リコリス』によく似た樹木の近くにでもいたと思うわ。
 それはきっとこの世界へつながる入り口だったのね…。
 もし、このまま何もしないで時間が経つのを待てば…、
 この世界は沈黙の闇に囚われ…あなたの世界と一緒に闇の中に封じ込まれるわ」


「そんなっ!」


「時間はないの…。あなたが動かないとあなたの世界も危ない…」


「…………」


サアヤは誠也の手を掴み取り、言った。


「お願い…」


「…………」















サアヤの手に触れた誠也は思った。



『なんだ?…この懐かしい感じ…前にどこかで…』



そして、オルガの方へ振り向き、言った。




「教えてください。僕はまず何をすればいいのですか?」

ユリコ 著