スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

会いにゆくよ (作者:ぽわん)

会いにゆくよ 【5】

まぁ僕のいきなりの告白に君が驚いたのは言うまでもない。
君は大きな目をさらに見開き、口をポカーンと開けていた。

「うーん、付き合ってほしいってこと?」

「あっ、えーと・・・ごめん・・・・・その・・・。」

好きだ!と、とっさに思って、とっさに口に出したはいいけれど
名前も何も知らない相手に僕の行動は非常識じゃないか・・・。
「キモイ」と言われて、恥をかいて、帰るだけ。
朦朧としていた意識が戻ってきて、後悔という情けない気持ちでいっぱいになる。
恥ずかしくて、君の足元だけを見つめて、なんとか立ち上がった。


「うーん、いいよ?」


えっ!?


「それよりお腹減っちゃった!」


それより、という言葉にひっかかりつつ、僕は君を見る。
君の顔を見るだけで、ドキッとした・・・・・。

「本当に、本当にいいの?」
「しつこいよ?いいっていってるじゃん!」
「そうだけど、でも、ってことは、僕のこと好き・・・ってこと?」
「第一印象は、嫌いじゃないよ。」
「そっか。じゃあこれから嫌いになるかもしれないのかな?」
「うーん、その時はその時で、ちゃんと言うから。」
「はぁ・・・・。」

初めての彼女・・・は、なんともあっさりとできてしまったのだった。

「あのさ、これから僕シチューつくるんだ。よかったら食べていかない?」
「このむし暑い日にシチュー!?」
「あっ、ご、ごめん。」

目をまん丸くさせながら、また笑って君は「いいよ」とあっさり答えた。

「早く行こ!!」

彼女は僕の足元の袋をひっつかんで、歩き出した。

「ねぇ、君の名前は!?」

君の声が響きわたって、僕らの周りの何もかもがキラキラして見えた。

ぽわん 著