スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

愛のことば3 (作者:さなぎ)

愛のことば3 【6】

・・・・


「ねぇ、もうずっと休んでないじゃない。ここまで兵士は来れないんだし、大丈夫よ。少し休んだら?なんだか・・・悪いわ。」

耳の横で彼女がそう僕に言った。

「大丈夫だよ。それに、きっともう少しで町につくよ。」
「そうだけど・・・。だって全然寝てないんでしょう?私のこと・・・治してくれたから。」
「僕はただ応急処置をしただけだよ。
でも・・・足で本当によかった。よっぽど運が良いよ。
 
もしも、胸とかに当たってたら・・・。」

「・・・私、運がいいんだね。」

ふふふ、と小さく彼女が笑う。
おぶっているから顔は見えないけれど、きっととても優しい顔で笑っているんだろう。



多くのことが一気に起こりすぎて、一日が二日間や、三日間くらいにまで感じられた。



彼女は、国境のところで撃たれた。



倒れた時は、嫌な予感がした。

けれど、不幸中の幸いで、弾は彼女の足に当たっただけだった。
そのことが分かるまでの間、僕の中で時が止まったようだった。



彼女は「足手まといになるから。あなたまで打たれてしまうかもしれないから。」と言って僕に自分をおいて行くように言ったけれど、僕は最初から決めていたんだ。


絶対に、彼女を守る。
自分のことを、大切だと言ってくれた、彼女を、失いたくは無かった。なんとしてでも。

だから、僕は彼女をおぶって国境近くにある村まで必死で走った。走って、走って・・・。


たどり着いたのは小さな村だった。
僕がある人に「医者を呼んでください。人が・・・撃たれたんだ。」というとその人は「残念だが、この村には医者がいないんだ。」と言った。
・・・。
医者がいない・・・。

どうしたらいいだろう?僕が治療する?

考えてる余裕なんて無かった。



そして、僕は「救急箱かなにか、応急処置が出来るようなものは、ありませんか?」と言ったのだ。


そのあとのことは、覚えていない。


気が付いたら彼女をおぶって、星が綺麗に輝いている中を歩いていた。



どうやって応急処置したんだろうな、僕は・・・。


早く町について、医者に見てもらわなくては。


そんなことを考えながらひたすら歩いてたら、だんだんと空が明るくなってきた。
もう少しすれば、夜が明け、歩きやすくなる。




心地よい沈黙。



すると、彼女が僕に話し掛けてきた。

「ねぇ・・・」
「何?」
「・・・頼み事があるの。」

頼みごと・・・?

さなぎ 著