スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

愛のことば3 (作者:さなぎ)

愛のことば3 【1】

その紙を見て、「あぁ、ついに来た」と思った。
ついに、僕にも召集がかかった。
もうこの国も終わりだ。




この国は、十年ほど前から着々と東国との戦争の準備をしてきた。

それが一気に表に出てきたのが約三年前。
その頃、僕は医者になろうと頑張って勉強していたが、仲間達は軍医、または兵士として召集されて戦場へ次々と行ってしまった。
僕は、違う国籍だから召集から免れていた。

けれど、辛かった。
国籍が違うというだけで、友達が行かなくてはいけないところへ行かずにすんでいる。

ものすごい罪悪感だった。

国籍は違っても、小さい時からこの国にいるし、自分の国籍である国には行ったことがない。
自分にとっては、ここが故郷なのに。他の人と同じなのに。

それに、仲間には両親がいて、祖父母がいる人もいて、兄弟だっていた。


何ヶ月か前、実際に僕は兵士として召集された友達の母に会った。

「この戦争ではね、兵士が道具として使われるの。少しでも動きが悪くなったら、すぐ捨てられる。帰ってくる人たちを見ると分かるでしょう?」

「えぇ。みな、大きな傷や、気が狂って帰ってきます。」

「この前、怪我をして帰ってきた人に話を聞いたの。
・・・地獄ですって。戦場は。人と人が殺し合い、感情も無くなり・・・。
戦ったあとは、いつもその場所には死体が山のようにあって、土には兵士の血が染みこんでいるんですって・・・。

生きては帰れない。そう言ってたわ。

終わりよ。もう。あの子はきっと帰ってこない・・・。
帰ってくるとしても、あんな姿で・・・。なんで、若い人たちから未来を奪うのかしらね・・・。
・・・返して欲しいわ、私と、息子の未来を・・・。
あなたは、生きてちょうだいね。せっかく助かっているのだから。

立派な医師になって。息子の分まで・・・。」

そう言って友達の母は泣き始めた。

その話を聞いて、僕は、戦場でそんな血が流されていたことも知らずに戦争がはじまってから生きていたんだと言うことを改めて知り、また罪悪感が増した。

けれど、初めて自分に「生きていて」と言ってくれる人がいた。

自分には両親も祖父母もみな病気で亡くなっていない。自分が戦場に行っても泣く人もいなければ、悲しむ人はいないだろう。
・・・そういう人が、行くべきところではないのかな、戦場は。そう思っていた。

僕に息子のことを重ねてみたのだ、ということは分かっているけれど嬉しかった。

頑張って、勉強していこう。そして、医者になる。
そう誓った。





そして、今日、僕の元へ召集の紙がきてしまった。
やっともう少しで医者になれるところまで来た。人を助けると言う夢を持ってやってきた。
兵士になるのは嫌だ。

でも・・・兵士にならなければ国にそむいたとみなされ酷いことになる。

・・・。どうしたらいいんだ。
とりあえず、彼女には知らせなくては。
そう思い、家を出た。

さなぎ 著