スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

eternal2 (作者:ナナ)

手を伸ばす 【5】

 その日は、やはり頭痛は引かずにいた。
 それでも、家事、炊事、洗濯などやらなければならないことが山ほどあった。
 会社に行けるかどうかというと、行けば頭痛が悪化しそうだった。
 あのセクハラ上司と平凡な日々、それらに悩まされるだろう。
 だから、アオイは家事をすることにした。
 ユウトには、『出来ればベッドで寝ててください』と言われたが、じっとしてる訳にもいかなかった。
 薬に頼りながら、家事をこなす。
「はぁ…、何が原因なんだろう……」
 そう思いながらここ2〜3日過ごしているが、痛みは一向に引かず、薬も利いていない気がした。
 その痛みに、気がおかしくなりそうにもなるし、気を手放しそうにもなる。
「気を失ったら……」
 いけないと分かってる。気を失えば痛みも手放せるが、そのまま起きる保証なんて0である。
 もしかしたら、そのまま一生ユウトに会えなくなるかも知れない。
 痛みは既に頭だけでなく身体にまで及んでいた。
 少なくとも、この意識を手放す前までは精一杯生きようと思った。
 アオイは、意識を手放すのが怖かった。
 毎晩毎晩繰り返していることなのに、今の私は恐怖を覚えている。
 今の私は、気絶することと死ぬことは同義だと思っているのだろうか。
「まだ…」
 ユウトに伝えていないことがたくさんあった。
 けれど、謎の病魔はそれを許してはくれなかった。

ナナ 著