スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

eternal2 (作者:ナナ)

手を伸ばす 【2】

 ユウトは彼女の残り香を鼻に感じつつも、あまり考えないようにしていた。
 数日前に退院したばかりなのに、また病院に逆戻りしては意味がない。そう思っていた。
「アオイ…」
 しかし、やはり目を覚まさない彼女が何度も頭をよぎる。考えないようにと思っていても、考えてしまう。
 彼は、職探しの途中だった。
 だから、家にいる時間は必然的に多くなる。
 しかし、不景気の今、そう簡単に雇ってくれるところは見つからないだろう、と諦めていた。
 そんな、ある日の夕方。
 ジリリリ…
 電話が鳴り響いた。
「誰だろ…」
 そう呟いて、受話器を取る。
「もしもし…」
 電話の相手は、おおよそ、予想もしていなかった相手だった。
 ユウトは次第に4ヶ月前のことを思い出していた。

ナナ 著