スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

マリンブルーの先 (作者:ひかる)

マリンブルーの先 【3】

歩き出したら運動不足がたたってか、森林の中で立ち止まってしまった。
休憩がてら座り込むと、いつしか眠りに落ちていた…。

人の気配にはっと目を覚ますと、目の前に女の子がいた。ゴールドの髪色で、毛先はくるくる。
僕は「わっ」と声を上げて驚いたが、その子はハテナの表情をしていた。


「こんな森の中に侵入者なんて、久しぶりね。」と鼻で笑う。
「…侵入者?」
「あなたのことよ。死を願望してきたんじゃないの?」
話を聞くと、この森は一般者立ち入り禁止エリアらしく、どうしても死を願望する者だけが入ってくるらしい。
僕はこの世界にきて「死」なんて考えたこともなかった。まるで、脳内から抜き取られていたかのようだ。

「僕は侵入者じゃないよ!」急いで言う。
「あら…そうなの?迷い込んだだけ?…そうよ、こんな森入ってこないほうがいいわ。忠告しておく。」
「本当に死ぬの?」
「さあね。ルール上、それは言えない。」
あまりにいろいろ聞くもんだから、うっとうしがられて森から出されてしまった。

こんなに人と話したのは久々だ。僕はわくわくしていた。


村に帰って、早速この話をしてみたが不思議なことに誰も知らない、聞いたこともないと言った。
むしろ、人気者になりたいがための出まかせではないかと噂まで流れ、
こんな世界に来てまで除け者にされてはと思い、結局あれは夢だったということにした。

でも、僕の中では温かい人間味のある時間だった。
あの時を過ごしたことを少しの誇りとして胸に閉じ込めていた。

ひかる 著