スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

楓〜kaede〜 (作者:ホワイトラビット)

楓〜kaede〜【6】

とうとうこの日が来た。
引越しでのこったものを取りに行く日。
そして、はるといっちゃんと渚に逢える日。
早く、逢いたい。
逢いたいばかりだと女子みたいだが、そんなのどうだっていい。
あえるんだから。
荷物を車にのせ終わって、家にあいさつした。いままでありがと。
あとは、車にのってはるんちに行くだけだ。
逢ったら何話そうかな?
まず、あやまって、それから・・・。
そんな事を考えてるうちに、春の家についた。
1週間ぶりなのに、みんな大人びて見えた。
「みんな、いままでいろいろ嘘いってごめん。」
みんなビックリしていた。それも無理ないだろう。あってすぐにあやまったから。
「顔上げて」
ってみんな言ったから、顔上げたら。みんななみだめだった。
僕の眼から熱い何かがこみ上げてきてそれが泪にかわって、こぼれ落ちた。
「ごめん。」
ぼくはもう一度あやまった。
「なんであやまんだよぉ〜。」
いっちゃんの目からも泪が。はるも、渚もだ。
「だって、いままでありがとうも、ろくに言ってなかったし、まさかこんなにかなしくなるとは、はるに・・・、いっちゃんに渚に、こんなに逢いたくなるなんて想わなかったから・・・。」
心がキューっと縮んでいくような苦しさをかんじた。きっと、みんなもそうだ。言葉で言わなくても通じる。
「いいよ。ゆるしたげる。」
沈んだ空気の中、明るい声で渚はいった。
「なぎ〜。おれも同感。」
いっちゃんがいった。
「ぼくも。」
はるがいった。
「みんな・・・。ありがとう。」
そこから、ほんとうのばいばいをして今日一日をおえた。
心の中はとってもきれいな楓色だ。その中には、渚色はる色いっちゃん色が混ざってて、心を、僕自身を染めてゆく。なにか暖かいものと一緒に。

ホワイトラビット 著