スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

青い車 (作者:53)

青い車 【6】

ひとしきり泣いて、すこし気分が落着いて、子供みたいに
彼女に抱きついた格好のままだけれど、僕はまともな言葉を次いだ。

「あのさ」
「うん?」

「最近、そっちの仕事は・・・きつくない?」
すると彼女は、いきなりどうしたのと言って、優しく笑った。
「うん、最近きついなぁ」

「疲れてない?」
「・・・うん、疲れた。そうね。疲れてるね」

「ああ・・・。あの、いつも、ごめんな・・・」
「・・・。お互い、疲れてるんやね・・・。ちょっと、休もうか・・・」

「ああ。休もう」
「ちょっと、うん、休もう」

彼女も、すこしだけ、泣いていた。


・・・
その日は、ふたりとも仕事を休んでみた。

昼過ぎまでベッドを出ないで、TVを観つつだらだらと過ごした。
彼女は再放送のクイズ番組にしきりに突込みを入れていた。

「お腹空かない?」
「空いた」

「どうする?」
「出ようか」

アパートを出たら、外はすっかり炎天下だった。セミの大合唱、舞い上がる熱風、強烈な日光。
見渡すかぎりに夏が充満していた。

「天気いいねぇ」
「うん」

53 著