スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

タイム・カプセル (作者:えりんこ)

タイム・カプセル 【23】

「人違いですよー!」

草野は未紀の母の問いかけに笑って否定した。

「まぁ、いっか! 未紀、あんた一生起きてこないと思ったからご飯、ない
わよ。」

「…あのー困るんですが…」

「はいはい、じゃあもう一回呼びに来るから!あ、あとそこの方ご飯は?」

「い、いらな…グゥウウ〜」

「わかったわーじゃあ、作りますね!ちょいとお待ちを。」

そういうと、部屋から出て行った。


「なぁ、未紀ちゃん。」

「はい?」

「俺、本当に忘れられちゃったのかな?未来ちゃんに…」

「どーでしょうね??」

「あー!なんかヒドい!」

「そーだ、トイレいってきまーす。」

「逃げたな!」

未紀は草野にそう言い残し部屋をあとにすると、トイレとは反対の階段で下
に下りた。

「お母さん!」

「ん?どうしたの?」

「ホントに忘れちゃったの?」

「何が?」

「あの人のこと!」

未紀が真剣に問いかけると、母はクスクス笑った。

「何がおかしいのよ!」

「未紀、あんたホントにおばかだねぇ〜」

「なんで?」

「忘れるはずないでしょう!」

「草野さん、ホントに心配してたけど…」

「え?」

「うん…それだけ、じゃ!」

そう言うと、タタタっと階段を駆け上り部屋へ戻った。

えりんこ 著