スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

テレビ (作者:ひかる)

テレビ 【3】

「ファーラー!もう朝よ、起きなさい!」
規則正しい命令文が、ファーラーに告げられた。
妊婦ということもあるのだろう、体が少しだるくて
まだウトウトしていた。

ファーラーの夫は、子どもを授かってすぐに死んだ。
そう体も強くなかったのだ。
意識もうろうの中、夫が告げた最後の言葉
「もし・・・、もし無事に赤ちゃんが生まれたとき、
目が見えないままで生まれてきても、自分を恨んじゃいけないよ。
目が見えないことは、他人より劣っていることではない。
その分、僕以上に、風を、匂いを、肌で感じ取れる、すばらしい体なんだからね。」

きっと、夫はファーラーがそれで自らの命を絶つかもしれない、と思ったのだろう。
それだけ、心配もしていたのだった。


夫の母、要するにお母様とは仲が悪かった。
というよりも、気に入られていなかったのだ。
「もう!何でも年寄りの私にやらせて。」こればっかり。
「奥様、私がやりましょう」
「え?・・・デニーじゃない!デニーは、向こうの棟の仕事だったでしょ。
「すべて終わらせたから、ここにいるのです。
ファーラーをかばうかのような口調に、「お母様」は、
仕方ないわね、好きなようにしなさい。 そう言って、城から出て行ったのだった。

「デニー・・・
「やあ、おはよう。何も心配はいらないよ。
手伝うことがあったら、気軽に私を呼んでくれ。
「でも・・・お年寄りに何でも頼めない。
「待て待て、お年寄りとはご免だぞ。そう若くはなくても、これでもいい運動になる。
そう言って、幸せに笑い、平凡な日々を送ることとなった。

ひかる 著