スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

UFOの見える丘 (作者:ひかる)

UFOの見える丘 【9】

俺は、息切れをしながらもアパートへついた。

間に合わなかったのか
上ではガヤガヤ言ってる。

錆びついた階段を、俺は一段一段上っていった


「かっわいー!」

そんな言葉に顔をあげると、
そこにいたのはシェリーではなく
一匹の猫だった。

「翔君ったら、子猫を拾ってきたのね〜
 隠すことないじゃない。誰も、取ろうなんて思わないんだから。

「は、はあ・・・・。

「あ〜あ。ここまで来て損しちゃった。
 さっ、仕事仕事〜。

ぞろぞろとみんなが戻っていく

「疲れているんじゃないか、今日はもう休め。
いじわる課長は、そう言って帰っていった。

有り難いような、気が引けるような。

「すみません」俺は一応、謝っておいた。


その日は、夜になってもシェリーは帰ってこなかった

次の日も、その次の日も、シェリーを見ることはなかった

家では、

なぜ入ってきたのかわからない子猫の泣き声だけが響いていた。

「もしかしたら」
俺は、子猫の鳴き声を聞いて
はっと、ある場所を思い出していた
そして、気づけば走っていた


少し小高い、特別なあの丘に。

ひかる 著