スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

UFOの見える丘 (作者:ひかる)

UFOの見える丘 【7】

ボロアパートの窓から朝日が差した

そういえば、いろいろと考えていたら寝ちゃったんだっけ。

「シェリー・・

起こそうと振り返ったら、またベランダに立っていた。
朝日を見ているんだろう
眩しそうに目を細めていた。

「・・・そんなにウイリーに帰りたい?

俺は恐る恐る聞いた。

「わからない・・・でも、何かわからない思いが湧きあがってきてるの。
「太陽を見ていたから、暑くなったんじゃない?
「違うの、気がついたら、ここが居心地のいい場所になっていたの。

居心地のいい場所か・・・
そう言われると嬉しい
でも、もしかしたらって期待してしまうから
それ以上、俺を天秤にかけないで。

ウイリー・・・俺


「じゃあ、出かけようか。
 って、その前に・・シェリー、服着替えよう、貸すから。

差し出したのは、シェリーにはちょっと大きめのTシャツにジャージのズボン。

そしたら、シェリーが脱げないとかいうもんだから、
そっぽを向きながら、背中のチャックをあけてあげた。
「あああ、あとはこれ着て!
バタン!

なに照れてんだよ、もう、俺ってば!

「お待たせ

ギリギリセーフ・・・
これなら外に出ても大丈夫か。



外に連れ出してはみたもの、会話が弾まない。

しかも、女の子の服装なんて全くわからないもんだから
お店に入っても、頭の中にはクエスチョンマークしか浮かばない。

「なんか気になったのがあれば、着てみていいよ

「んっと・・・じゃあ、あれとあれとあれ・・・。

「着てみなくていいの?
「いいの。

なんだ、あっさりしてるんだ。

帰り道ではちょっとだけしゃべった。
ウイリーの街ってどんなところ? とか、
みんな同じ服装? とか
いつの日か憧れていた、
宇宙にはまだ他の惑星があるんじゃないかっていう空想を抱きながら。

あの時あこがれてた何かが、今も見えている気がした。


ウイリーの街は、街っていうところもなく
食べ物は木の実を食べたり、お店もないし、
広場に木の家がそこらじゅうにあったり。広場みたいな。

服装は、シェリーが着ているものとみんな同じ。


シェリーのことを詳しく知れて、俺は嬉しかった。
シェリーのことを知っているのは俺だけ。
束縛ってわけではないけど、俺だけのものにしておきたかった。



家に着いたら、携帯が鳴った。
上司からだった。
急に仕事が入ったみたい。

「ごめん、仕事に行ってくるから、買ってきた服着てみててね。
 サイズとか合ってるかわからないし
「わかった。

ひかる 著