スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

君が思い出になる前に (作者:コーラ)

君が思い出になる前に 【3】

 「ねぇ悠太ぁ〜♪あれ買ってぇ〜!あれも買ってぇ〜!」

 「はぁ・・・またその目かよ・・・」

 「最後だからいいでしょ?お願い!!」

 「・・・・・・・わかった」

 「わ〜い!!悠太最高!!」
 
  真由はいつものようにニコニコと笑っていた

  本当は泣きたいほど辛いくせに

  俺はそんな作った笑顔なんて見たくなかった

  真由・・・無理して作った笑顔なんて俺うれしくないよ
 
 「あっ!もう五時だね!えへへ!じゃあね!悠太!」

 「あ、ああ・・・・」

 「もう!今日ずっと暗い顔してるよ!ほら!最後にスマイル!スマイル!」

 「やだよ・・・」

 「はぁ・・・もういいや!じゃあね!悠太!見送りに行くからね!」

  今日だけ・・・今日だけは真由に虹のように消えないでほしかった
 
  でも、そんな夢は叶わず、真由との最後の時間がゆっくり、静かに消えていった・・・

 
  〜次の日〜


 「悠太・・・そろそろ行くわよ・・・」

  母がそう言った

 「・・・・・うたぁ〜!ゆ〜うたぁ〜!!!」

  そう叫んできたのは

 「真由!!!」

 「ハァハァ・・・良かった・・・間に合って・・・」

 「どうしたんだよ!そんなに走って」

 「昨日言ったじゃない・・・見送りに行くって!」

 「・・・・真由・・・」

 「いっつもケンカばかりしてたけど、私は・・・私は悠太のこと大好きだからね!

  どんなに遠くに離れても・・・」

 「・・・わかってる・・・俺も同じだよ・・・」

  俺は真由を強く抱きしめた

 「悠太・・・」

  真由は涙を流した

 「真由・・・最後に俺のお願い聞いてくれる?」

 「?いいよ」

 「忘れないで・・・俺と真由で重ねた日々を・・・この世に生きた意味を

  超えていたことを・・・」

 「・・・・・うん・・・忘れないよ・・・」

 「あと・・・」

 「悠太!!もう船が出ちゃうわよ!!」

 「あ!うん!」

 「・・・じゃあね!悠太!!」

 「うん!じゃあな!真由!!」

  俺は自分の中で最高の笑顔をした

  でも、真由には寂しそうな笑顔にみえていたと思う

 
 「バイバイ!!悠太!大っ好きだよ!!」











  船に乗って何時間たっただろう

  真由は何をしているのだろう

  俺はまだまだ真由に言いたいことがいっぱいあった

 「ごめん」や「ありがとう」を・・・


  あと・・・「最後に真由が思い出になる前に、もう一度・・・

  もう一度でいいから俺に笑ってくれ。優しいふりでもいい、作った笑顔でもいい

  また・・・あの子供に目で俺を困らせてくれ」って・・・



  「さよなら真由・・・大好きだよ真由・・・」




   〜完〜

コーラ 著