スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

スノードロップ (作者:香夜)

スノードロップ 【2】

2月上旬
街はバレンタイン一色となる


「ねぇ、今年もあげよっか?
 チョコレート☆」

放課後、学校の玄関先であたしは靴のつま先を 
トントンと鳴らしながら、圭汰に訊く。

「うーん。中学入ってから、チョコなんて たんまり貰ってるからなぁ
 〜〜^m^」
圭汰がおどける。
あたしはムっときたので、
「もー!どっちよ!!」
とちょっと怒った。
「ははは^^
 んじゃ、ちょうだいよ。チョコ♪」
彼はお日様のような笑顔をこちらへ向けた。
あたしは顔が赤くなりそうだったので、圭汰から視線を外し、
素っ気なく、
「あ・・・、『あげる』っていっても、義理だかんね!!」
と言ってやった。
すると圭汰は
「わーってる!毎年義理ぢゃん」
と、また 笑いながら言った。



『義理』だなんて嘘だよ。
実は『本命』だったり する・・・
でも 気持ちを隠すために『義理』と装って、毎年 ”義理以上 本命
未満”という曖昧なチョコを渡しているのだ。


「あっ!!」
いきなり圭汰がトナリで大声を出す。
あたしはそれにビクッとする。
「なッ・・・何よ!?」
圭汰がこちらを向く。
「なぁ、もうすぐお前 誕生日くんじゃねぇか?」
「え?」

たしかにあたしの誕生日は2月27日。
でも「もうすぐ」って・・・
まだ 2月上旬。2月になってから、1週間も経ってないのに・・・

「何か欲しいもん、あっか?」
「・・・まだ考えるには早いよー」
あたしは喜びを感じつつも、困った顔をしてみせる。
「高いモンだったら、金貯めねぇといけねぇだろ?」
「・・・あはははっ!!何それぇ〜!!」
彼のその答えに思わず吹き出してしまった。
「だってそーだろ!!」
「あたしだってあんたの財布の事情くらい分かってるよー。
 今 1000円しかないっしょ??」
「うっ;」
「だてに幼なじみじゃないもーん♪」
「・・・成長したな、明日香」
「圭汰が置いてかれてるだけじゃない?」
「なにぃ!!?」
「はははっ!
 でもとりあえず考えとくね、プレゼント☆」



学校の玄関先での話。
どこにでもありそうだけど、あたしにとっては
決して 短くもなく、長くもない・・・
愛しい時間だった。


いつもの特等席での―・・・

香夜 著