スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ハニーハニー (作者:P)

ハニーハニー 【2】

「(また朝だ・・・・・)」
夏休みの真っ最中8月上旬。
毎日暑い日照りが続く。
普通の人なら、こんな日は家のクーラーで涼みながら宿題、なんてのんきなことやってるんだろうけど、わたしはそうはいかない。
宿題ができる時間なんて、夏休みの最後に設けられた、天国の6日間だけだった。
その理由は部活。
吹奏楽部だ。
天国の6日間(部活の夏休み)以外は毎日。
朝の8時から、夜の9時まで。
はっきり言って、ここに入ったときから、「なんかおかしい」と思っていたのだが・・・・・
やっぱり、ここはおかしかった。
というより、変だった。
例えば、こういうところが変なのだ。
日照り続きの日々で、外の練習だったから、体調不良者が出てもおかしくない、いや、出ないとおかしいくらいなのだ。
もちろん、「気持ちが悪い」「おなかが痛い」等のうったえは度々あった。
しかし、ここではそれが許されない。
全て疑われてしまうのだ。
実際、わたしも練習中おなかが痛くなり、先輩に言った。
すると、最初は「木陰で休んで、なおったらまた練習に入って」との厳しい言葉ではないのだが、ちょっとたつと、「あの子、ホントにおなか痛いのかなー?」「やっぱズル休みしたいんじゃねー?」といった流れになり、あっという間に先輩達に広まり、あっという間に練習に戻されてしまう。
まるで悪魔だ。
今考えても、恐ろしいほど、そこは異常だった。
そんなわけで、部活に行きたくなくなり、朝が怖かったのだ。

「天、部活遅刻するよー」
お母さんだ。
布団をひっぱがしてくる。
こうやっていつも、わたしを無理やり部活に行かせようとする。
なきわめいても、何とか服を着替えさせ、車に詰め込み、連れて行くのだ。
ノイローゼとでも言うんだろうか。
そうやって、わたしの暗闇への道が開かれることになってしまった。

P 著