スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

青 い 車 (作者:白炎)

青 い 車 【11】

僕は呼吸を整えて、愛する君を殺める朝を迎えた。
何度、愛する戯れの中で君との永遠の別れをしようと思っただろうか。
僕には出来なかった。
君が望む、別れをすることがせめてもの償いだと考えたから。


君は瞳を閉じて、僕が来るのを待っていた。
足音を一つ一つ数えて、僕の存在を感じてた。

君と過ごした部屋に、寝転ぶ君。
ことばをすべて消した空間が僕に孤独を知らせる。
僕は何も言わず、君の首に手を当てた。
瞳が湿った。
両手で君の首を確かめて、僕は君の体温を感じた。

突然君の、唇が動いた。
僕は、泣きそうになった。



”ねぇ、私を愛してた?”



―――――――――――――――――”さぁ?”




呟きながら、僕は君に手を掛けた。
瞳からは泪が溢れ出した。
ぼやけた視界の君も泪を流してた。
白く細いその首は力を入れなくても簡単に絞まった。

濁った声も出さず
ただすこし微笑んで
僕に”ありがとう”と口だけ動かした。

君の体温がどんどん落ちていくのをこの手で感じながら
僕は狂ったように泣き叫んだ。


君を、愛しすぎた。
時が経つ事を最も恐れた君の時を止めた。
君を愛しきれなかった、せめてもの罪滅ぼし。
君を愛した精一杯の愛のしるし。
君が生きてるうちには出来ない、僕の愛し方。

君をこの世でもっとも愛してたんだ。


その時、君へ贈れなかった愛のことばを僕は見つけた。





―――――――――――――――――――――――――それはキレイな死に方だった。







=完結=

白炎 著