スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

青 い 車 (作者:白炎)

青 い 車 【7】

今思えば、とても莫迦々々しくて恥ずかしいことなのかもしれない。
僕は君の事を何も知らなかった。
一緒にいれればそれで良くて、君のことを知りたいと思わなかった。

そう、この時までは。


君は街ですこし評判の変わった美人だった。
人に声を掛けられても、自分の質問を押し通し気に入った答えの人にしか振り向かない。

そう、僕にしか君は興味を持たなかった。


僕は到って普通の容貌で、特に”良い”と言える部分がなかった。
背もあまり高くない、スタイルが良い訳でもない。
君と歩くのが少し申し訳なかった。
でも君は、じっと僕を見つめていつもニコニコ笑ってた。

長い睫毛が瞬きするたび、君の長い髪と柔らかな頬から良い匂いがした。
甘くて、優しい、桃のような香りがいつもしていた。


君はいつも大きな茶色の手帳を持ち歩き、それに何かを書き込んでいた。
僕が見せてと言うと、君は首を振って手帳を閉じた。
嫌だと言うものを見るのはいい気がしないので、僕はそれ以降何も触れずにいた。

そのまま見ずにいれば、きっと今日も君と笑って居れたかもしれないのに。

白炎 著