スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【10】

俺は、自分の中で渦巻く感情がまだ信じられなかった

確かに彼女は、サオリさんは綺麗だ。だからといってこんな簡単に・・・恋なんて、していいものなのだろうか?

でも、それでもいい。と悟ったように笑う自分が裏に居るのが分かって

考えるのすら馬鹿らしくなってサオリさんを見つめていた



サオリさんは話しながら泣いたりした

その涙すら、好きで好きで好きで、零れ落ちた涙をすくって瓶にでも入れて永久保存したいぐらいに

なんだか恥ずかしいけど、そのくらいサオリさんが可愛く見えたんだ。



サオリさんは心の中の叫びをゆっくりと、ジグソーパズルのピースを選ぶようにして

言葉にしていった

繋がれた「言葉」達はとても意味があるものとなって俺の中に入っていった





そこには確かに、俺の知らない「世界」が広がっていた

途方にくれるほど遠い青い、青い青い空と、海。手には届かない永遠の、幻。



「翔太、翔太のことも聞かせて。私も知りたいの。」



目に映ったのは、果てしなく広がるサオリさんの世界。

悲しいほどに、苦しいほどに、青い。青い青い青い、涙のような―、サオリさんの心の中。

その中に、僕の世界が加わることが出来るなら。

彼女の心の隅っこにでも生きることが出来るなら。―――分かって欲しい、サオリさんに俺のすべてを。



俺も何から言えばいいのか分からなかったけど、出来るだけ言葉にして伝えようとしてみた



父が居ないこと、母が仕事が遅いこと。友達との間で「隔たり」を感じること。



「そんなの、小さなことだ」って笑われるかもしれない、それでも俺は話した。

喜びも、悲しみも、ちょっとした心の変化までも分かち合える 2 人、になりたかったのだ。



サオリさんは俺の話を聞いている間中、ジッと俺の目を見ていた。

突き刺すように痛い、心が奪われそうになるその目は。俺の心までフラフラにさせた



小さく相槌を打って、時々涙を浮かべて、ちょっと笑ったり。

小さな仕草の一つ一つが、たまらなく嬉しかった。



話し終わった時、空は明るいネイビーに見えた。

あつこ 著