スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【6】

「自分なんて死ねば良いのでは無いか?」という思いが2人の心を繋いだ

「なんか、ゴメン。マジで」とサオリさんはぼそっと俺に言った
「いや、大丈夫です。」と俺はサオリさんに言った

夜の中にぽつん、ぽつんと光の粒が浮き上がって見えた
それはまるで昔見た、プラネタリウムの夜空のようで俺は少しだけ、見とれた
横をチラリと見るとサオリさんが泣き出しそうな目をしながら、
見とれるかのようにして下を見ていた

正直の所、サオリさんは、綺麗だと思った。でも綺麗、の一言では表現しきれない美しさがあった

俺自身が壊れてしまいそうになる、サオリさんも触れるだけで壊れそう。でも、触れたい。
隠し切れない想いが零れそうになった
「翔太さ、毎日楽しい?」サオリさんは俺に聞く
俺は何も言えずに、立ち尽くしていた。聞かれたく無いことだった
楽しい、とはどう頑張っても言えないような寂しい日々を毎日送っていると自分でも認めたく無かった

「なぁんだ…あたしと、一緒、か。」とサオリさんは呟いた
「え?」と俺が聞き返すとフフフ、と髪を風に靡かせながら苦しそうに笑った

そして、沈黙。
何か言おう、としても言葉は見つからなかった。
言いたいことが、伝えたいことが、聞きたいことが、こんなにも寄せては引くさざ波のようにあるというのに俺はその波にすら乗れなかった
でも、言葉はいらない。という感じだった
お互いの痛みを、傍に居るだけで分け合える。そんな感じがして俺はなぜか安らいだ

「あたしさ、いじめられているんだ」


月がちょうど、雲に隠れた時だった
消えそうな声でサオリさんはそう呟いた

あの時の涙と、辛そうな声と、苦笑いとよく見たらひざにある、大きなばんそうこうは
ソレを最初から物語っていたのかもしれない

「い…じめ?」俺は聞き間違いを祈りながらもう一度尋ねた
「そっ、女ってのは怖いのよ。」と手をヒラヒラと仰ぎながら軽く言った
「なん、で?」たどたどしく俺が聞くとまるで聞いてはいけないことだったのように悲しい目をした

サオリさんは気のせいか、肩を、声を震わせていた
「いろいろ、あるのよ。中学生にでもなると。
まぁ、そんなのへっちゃらなんだけどねぇ」

軽くサオリさんはそう言ったけれど俺にはすぐに分かった
「で、でも…目、潤んでるよ?」

そう俺は思わず言ってしまった
あまりにも、苦しそうに言ってるもんだから
それにそんなサオリさんを見るのは苦しかったし嫌だったから

サオリさんはえ?と言う様に目を丸くして頬をつたう雫を確かめていた。

あつこ 著